なぜドラム練習にハマるのか?「やってみたい」から1日も休めなくなるまでの心理変化

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こんにちは、ドラム講師の川島です。

今回は、なぜドラム練習にハマるのかというテーマで、私自身の体験を振り返りながら書いてみたいと思います。

今でこそドラム講師として仕事をしていますが、最初から「毎日何時間でも練習したい」と思っていたわけではありません。最初は本当に、「ちょっとやってみたい」という程度の小さな興味から始まりました。

それがいつの間にか、ドラムを叩くことが楽しくなり、少しずつ叩けることが増え、もっと上手くなりたいと思うようになり、気づけば1日も休みたくないと思うほど夢中になっていた時期がありました。

ただ、この記事は「毎日何時間も練習しましょう」という話ではありません。むしろ、人が何かに夢中になっていくとき、心の中で何が起きているのか、そして最後にはどうやってバランスを取っていくのか、という話です。

今振り返ると不思議なんですが、人生を変えるようなことは、最初から大きな決意として始まるとは限らないのだと思います。何となく惹かれる、ちょっと気になる、やってみたい。そういう小さな感覚が、あとから振り返ると大きな入り口になっていたりします。

今回は、そんな私自身の「ドラム 練習 ハマる」までの心理変化を、できるだけ順番に整理してお話ししていきます。

  1. すべての始まりは「なぜかわからないけど好き」だった
    1. 小学生の頃にCHAGE and ASKAが好きだった
    2. ライブ映像のドラムが気になった
    3. 好きになる理由は説明できないこともある
  2. 中学卒業から15歳で初めてドラムを叩くまで
    1. 卒業式でドラムを見て「高校でやってみたい」
    2. 初めてドラムセットに座った感動
    3. 「見る楽器」から「自分で鳴らす楽器」へ
  3. 曲が叩けるようになるたびにドラムが好きになった
    1. ライブビデオやテレビを何度も見て真似した
    2. 基礎は知らなくても「できた」が楽しかった
    3. 友達が辞めても、自分は辞めたいと思わなかった
  4. 初めての挫折|自分は初心者だった
    1. 専門学校の体験入学で受けたショック
    2. なぜ辞めるのではなく「練習しよう」と思ったのか
    3. 基礎練習とルーディメンツの存在を知る
  5. 好きなのに、なぜかなかなか上手くならなかった
    1. 浅草のドラム道場に通った時代
    2. 当時の練習は週1回1時間程度
    3. 「好き」と「練習習慣」は別だった
  6. ITエンジニアになってもドラムを諦められなかった
    1. 正社員とドラムの二重生活
    2. 一生ITエンジニアでいいのか決められなかった
    3. 20代のうちに決めたいと思った
    4. 27歳でアメリカ留学を決断
  7. 毎日練習したら「練習すれば上手くなる」と初めてわかった
    1. ドラムだけを考えられる生活
    2. 1時間練習すれば1時間分の経験が残る
    3. 完成しなくても昨日より前に進んでいる
  8. なぜ練習時間が1時間から10時間へ増えていったのか
    1. 上達が見えると、また練習したくなる
    2. 練習そのものが楽しくなった
    3. 10時間練習した後なのに、また練習したかった
  9. そして「1日も休みたくない」と思うようになった
    1. 1日休むと10時間分上達できないように感じた
    2. 「好き」から「もっと上手くなりたい」への変化
    3. 夢中になるとはこういう状態なのかもしれない
  10. ドラムを仕事にしたら、新しい矛盾が生まれた
    1. 練習してきたことを人の役に立てたかった
    2. ところが仕事する時間まで練習したくなった
    3. 「何のために上手くなりたかったのか?」
  11. このままドラムだけで人生が終わってしまうと思った
    1. 好きだからこそ距離を取る必要があった
    2. あえて練習しない時間を作った
    3. 空いた時間=練習時間という考え方から離れる
  12. 今振り返ると、あれほど夢中になれたことが幸せだった

すべての始まりは「なぜかわからないけど好き」だった

小学生の頃にCHAGE and ASKAが好きだった

私がドラムにのめり込む最初のきっかけをたどっていくと、小学生の頃までさかのぼります。

当時、私はCHAGE and ASKAが好きでした。なぜ好きだったのかと聞かれると、実は今でもうまく説明できません。もちろんASKAさんの声が好きだったというのもありますし、当時は世間的にも非常に人気があり、ドラマの主題歌などで耳にすることも多かったと思います。

でも、最終的にはそれだけでは説明しきれません。結局のところ、「なぜか惹かれた」というのが一番近い感覚です。

私はライブビデオをたくさん持っていて、何度も何度も見ていました。そして、そのバックバンドで演奏していた菅沼孝三氏のドラムを見て、子どもながらに「ドラムってかっこいいな」と思っていました。

今思えば、その時点ですでにドラムへの入り口は開いていたのだと思います。人が何かを好きになる最初の理由は、必ずしも理屈で説明できるものではありません。

少し大げさに言えば、運命だったのかもしれませんし、宇宙からの指令だったのかもしれません。もちろん本当にそういう意味ではありませんが、それくらい自然に惹かれていた、ということです。

ライブ映像のドラムが気になった

最初は曲そのものが好きだったのですが、何度もライブ映像を見ているうちに、だんだん演奏している人たちにも目がいくようになりました。その中でも、ドラムは特に印象的でした。

前に座って派手に目立つ楽器ではないかもしれませんが、曲全体を動かしている感じがありました。バンドの後ろにいながら、音楽の流れを支えていて、しかも動きもかっこいい。そういう存在としてドラムを見ていた気がします。

この段階では、まだ「自分が絶対にドラマーになる」と思っていたわけではありません。ただ、心のどこかに「ドラムは気になる楽器だ」という感覚が残っていたのだと思います。

好きになる理由は説明できないこともある

これはドラムに限らずですが、何かを本当に好きになる最初のきっかけは、案外はっきりしていないことが多いです。理屈ではなく、感覚として惹かれる。だからこそ強いのかもしれません。

ドラム 練習 モチベーションというと、「目標を決める」「目的を明確にする」といった話になりがちですが、もっと前の段階には、「よくわからないけど好き」という感情があります。私はそこが出発点でした。

ドラムそのものの楽しさについては、こちらの記事でも詳しく書いています。

私がドラムに出会うまでの流れを整理すると、こんなイメージになります。

中学卒業から15歳で初めてドラムを叩くまで

卒業式でドラムを見て「高校でやってみたい」

その後、中学校の卒業式で吹奏楽部の演奏を聴く機会がありました。そこでドラムを演奏している部員を見て、私はふと、「高校に入ったらやってみたいな」と思いました。

ここで大事なのは、この時点でもまだ決意はそこまで強くなかったということです。「将来ドラマーになるぞ」と思ったわけではありません。本当に「ちょっとやってみたい」という程度でした。

でも、こういう小さな「やってみたい」は侮れません。人生の大きな流れは、意外とこのくらいの小さな願望から始まることがあるからです。

初めてドラムセットに座った感動

そして高校1年生、15歳のときに初めて本物のドラムセットに座りました。そのときの感動は、今でもはっきり覚えています。

見るだけだったドラムが、自分の手足で音を出せる楽器になった瞬間でした。スネアを叩く、ハイハットを鳴らす、バスドラムを踏む。それだけで本当に感動しました。

今なら少し笑ってしまいますが、当時は「うわ、これ自分で鳴らせるんだ」というだけでかなり興奮していました。見る側から演奏する側に変わった瞬間だったと思います。

「見る楽器」から「自分で鳴らす楽器」へ

この変化はとても大きかったです。興味があるだけの状態と、実際に触れてみて「楽しい」と思う状態の間には、はっきりとした差があります。

「やってみたい」「楽しい」に変わると、人の行動は一気に前に進みます。ここから先、私の中でドラム 練習 楽しいという感覚が少しずつ育っていきました。

このあたりの心理の流れは、次のように整理できます。

曲が叩けるようになるたびにドラムが好きになった

ライブビデオやテレビを何度も見て真似した

高校に入ってからは、友達とバンドを組んだりしながら、好きな曲や友達がやりたいと言った曲を少しずつコピーしていきました。

当時は今のようにYouTubeでいくらでも解説動画を見られる時代ではありません。ですから、ライブビデオやMTV、ミュージックステーションなどを録画して、何度も見返しながら真似する、というやり方でした。

見る。真似する。叩いてみる。できない。また見る。また叩く。そういうことの繰り返しでした。

基礎は知らなくても「できた」が楽しかった

この頃の私は、ドラム 基礎練習というものをほとんど理解していませんでした。正しい奏法もよく知りませんでしたし、ルーディメンツの大切さもわかっていませんでした。

それでも楽しかったのは、「少しでもできた」という感覚があったからです。

昨日できなかったフレーズが今日は少しできる。昨日より曲に合わせやすくなる。そういう小さな成功体験が、とても嬉しかったのです。

人がドラム 練習 続けるためには、最初から完璧を目指すことよりも、こうした小さな「できた」を積み重ねることの方が大事なのかもしれません。

友達が辞めても、自分は辞めたいと思わなかった

高校3年間、いろいろな曲をコピーしながら過ごしました。そして卒業が近づくにつれて、一緒にバンドをやっていた友達は少しずつバンドを辞めていきました。

でも、私はまったく辞めたいと思いませんでした。むしろ逆で、「もっと上手くなりたい」という気持ちがどんどん強くなっていました。

この頃には、ドラムは単なる趣味というより、自分の人生の中でかなり大きな存在になっていたと思います。将来はドラムの仕事ができたらいいな、という気持ちも出てきていました。

同じ環境にいても、途中でやめる人もいれば、もっと続けたいと思う人もいます。その違いについては、こちらの記事でも関連する話を書いています。

高校時代の分岐をイメージすると、こんな感じです。

初めての挫折|自分は初心者だった

専門学校の体験入学で受けたショック

高校卒業後、音楽の専門学校の体験入学に行きました。自分では、高校3年間ドラムをやってきたつもりでしたし、ある程度は叩けるつもりでもいました。

ところが、いろいろと演奏について指摘され、「初心者コースから始めた方がいい」と言われたのです。

これは正直、かなりショックでした。当時の自分にとっては、初めての大きな挫折だったと思います。自分では経験者だと思っていたのに、実際には基礎が足りていなかったわけです。

なぜ辞めるのではなく「練習しよう」と思ったのか

ただ、不思議なことに、そのとき私は「向いていないのかもしれない」とは思いませんでした。むしろ、「では、どうすれば上手くなれるのだろう」と考えました。

これは今振り返ると、すでにドラムそのものがかなり好きだったからだと思います。好きだからこそ、挫折してもやめる方向にはいかなかったのです。

もしそこで自分にとってどうでもいいものであれば、「ああ、自分には向いていなかったんだな」で終わっていたかもしれません。でもドラムはそうではありませんでした。

基礎練習とルーディメンツの存在を知る

そこから、基礎練習やルーディメンツの存在に少しずつ気づいていきます。ドラム 上達は、ただ好きな曲を叩くだけではなく、土台になる練習が必要なのだと理解し始めました。

基礎練習の大切さについては、こちらの記事でも詳しく書いています。

また、ドラム 挫折をどう乗り越えるかという視点では、こちらの記事もあわせて読んでいただくと流れがつかみやすいと思います。

最初の挫折が、そのまま次の学びの入口になった流れは、次のように整理できます。

好きなのに、なぜかなかなか上手くならなかった

浅草のドラム道場に通った時代

その後、私は浅草のコマキ楽器のドラム道場に通うようになります。そこで教えてもらったことを何とか身につけようとして、コツコツ練習していました。

ただ、この頃の私はまだ練習の本質をつかめていませんでした。教わったことはある。やる気もある。ドラムも好き。なのに、なかなか思うように上達しない。そんな時期でした。

当時の練習は週1回1時間程度

今思えば理由はかなりはっきりしています。練習量が少なかったのです。週に1回、1時間程度。それでも当時は「練習した」と思っていましたが、今振り返ると、やはりそれでは十分ではありませんでした。

もちろん、週1回1時間の練習が無意味だと言いたいわけではありません。大事なのは、当時の私が「上手くなりたい気持ちの大きさ」に対して、「練習の量と質」が追いついていなかったということです。

「好き」と「練習習慣」は別だった

ここでよくわかるのは、好きであることと、上達できる練習習慣を持っていることは別だということです。

ドラムを好きになることはとても大切です。でも、ドラム 上手くなりたいと思うだけで自然に上達するわけではありません。練習方法、量、積み重ね方が必要になります。

正しい練習方法や順番については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

また、短時間でも上達を実感しやすい考え方については、こちらも参考になります。

この時期の私の状態をまとめると、次のような流れでした。

ITエンジニアになってもドラムを諦められなかった

正社員とドラムの二重生活

その後、私はITエンジニアとして就職しました。正社員として働きながら、趣味としてドラムを続ける生活です。社会人として働きつつ、空いた時間に練習する。一般的には自然な形だったと思います。

でも、私の中ではずっと迷いがありました。「このまま一生ITエンジニアとして生きるのだろうか」という感覚です。

一生ITエンジニアでいいのか決められなかった

ITエンジニアの仕事が嫌だったという単純な話ではありません。ただ、どうしてもドラムへの気持ちが消えませんでした。それくらいドラムが好きだったのです。

仕事をしながらでも練習は続けていましたし、年齢を重ねるにつれて少しずつ練習量も増えていきました。20代のうちに、自分はどちらの道へ行くのか決めなければいけない、という気持ちが強くなっていきました。

20代のうちに決めたいと思った

この頃の私は、まだ明確な答えを持っていたわけではありません。ただ、何となくでは終わらせたくなかったのだと思います。もし本当にドラムの道へ進みたいなら、どこかで大きな決断をする必要がある、と感じていました。

27歳でアメリカ留学を決断

そして27歳のとき、私はアメリカのDrummers Collectiveへ留学することを決断します。

理由はとてもシンプルでした。もっと上手くなりたい。それが一番大きかったです。

ここから、私のドラム人生は大きく変わっていきます。

毎日練習したら「練習すれば上手くなる」と初めてわかった

ドラムだけを考えられる生活

留学中は、毎日授業があり、毎日個人練習がありました。貯金を崩して生活していたので、働く必要はありませんでした。つまり、寝ている時間以外はほぼドラムのことだけを考えられる生活だったのです。

学校、アルバイト、仕事、人間関係、その他の用事。今までの人生では常にドラム以外に考えなければならないことがありました。でも留学中は、それがかなり減りました。

私にとってこれは本当に幸せな状態でした。好きなことだけを考えていられる。これほど贅沢な時間はなかなかありません。

1時間練習すれば1時間分の経験が残る

そしてこの時期、私は大きなことに気づきます。練習すると本当に上手くなるということです。

当たり前のように聞こえるかもしれません。でも、週1回1時間程度の練習だった頃の私にとっては、これはかなり衝撃的でした。

1時間練習すれば、1時間分の経験が確実に残る。今日やったフレーズが完璧にできるようにならなくても、昨日の自分よりは1時間分前に進んでいる。その感覚が明確にわかるようになったのです。

完成しなくても昨日より前に進んでいる

ここで大事なのは、練習の成果を「完全にできたかどうか」だけで判断しなくなったことです。

たとえ未完成でも、手応えが少しでも増えていれば前進です。動きの感覚が前日よりわかる、テンポ感が少し良くなる、音が少し揃う。そういった小さな変化が積み重なっていきました。

この感覚を持てるようになると、ドラム 練習 モチベーションはかなり変わります。なぜなら、練習そのものがちゃんと意味を持って感じられるからです。

モチベーションの保ち方については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

この留学後に起きた変化は、次のような好循環として見ることができます。

なぜ練習時間が1時間から10時間へ増えていったのか

上達が見えると、また練習したくなる

毎日練習する中で、私は次のように考えるようになりました。

「1時間でこれだけ変わるなら、2時間やったらどうなるだろう」

「3時間やったらもっと変わるのではないか」

こうして練習時間は自然に増えていきました。無理やり増やしたというより、上達が見えるから、もっとやりたくなったのです。

練習そのものが楽しくなった

ここがとても重要です。

最初の頃は「曲が叩けるようになること」が主な楽しさでした。しかし留学中は、だんだんと練習そのものが楽しいという感覚に変わっていきました。

練習する。少し上手くなる。嬉しい。もっとやりたくなる。さらに上手くなる。さらに楽しくなる。こういう循環に入ると、ドラム 夢中という状態が強くなっていきます。

今振り返ると、この時期の私は「上達が報酬になる状態」に入っていたのだと思います。結果が楽しみなのではなく、成長していく感覚そのものが楽しい。だから続くし、もっとやりたくなるのです。

10時間練習した後なのに、また練習したかった

やがて、多い日は1日10時間ほど練習するようになりました。

ただし、誤解してほしくないのは、苦しみながら「10時間やらなければ」と追い込んでいたわけではないということです。むしろ逆で、楽しかったから自然にそれだけやっていた、という感覚に近いです。

10時間練習してスタジオを出て、家に帰ったあとに、また練習したいと思う。今なら少し笑ってしまいますが、本当にそんな状態でした。

ドラム練習がつらいと感じるときのバランスの取り方については、こちらの記事も関連しています。

そして「1日も休みたくない」と思うようになった

1日休むと10時間分上達できないように感じた

練習時間がどんどん増えていく中で、私の心理はさらに変化していきました。

1時間練習すれば1時間分、2時間練習すれば2時間分、自分が前に進んでいる感覚がある。そうなると、1日10時間練習している時期には、「1日休む=10時間分の上達機会を失う」というふうに感じるようになっていったのです。

「今日は休みだから仕方ない」ではなく、「今日やっていたら、もっと前に進めていたはずなのに」と思ってしまう。すると、休むことそのものが惜しくなってきます。

ここまでくると、ドラム 毎日 練習したいというより、練習しない日を作るのがもったいない、と感じる状態になります。

「好き」から「もっと上手くなりたい」への変化

この段階では、単にドラムが好きだから叩く、というだけではありませんでした。

「もっと上手くなりたい」
「昨日より前に進みたい」
「できるようになる感覚をもっと味わいたい」

そういう欲求がかなり大きくなっていました。ドラム 練習 楽しいという感覚はそのままなのですが、その中に「上達への強い欲求」が深く入り込んでいたのだと思います。

夢中になるとはこういう状態なのかもしれない

今振り返ると、これが私にとっての「夢中」だったのだと思います。

スタジオへ行く。練習する。帰ってからもドラムのことを考える。次の日また練習する。それが苦痛ではなく、むしろ幸せでした。寝ている時間以外はほとんどドラムのことを考えていたような時期でした。

ただし、これはあくまで私の当時の心理状態です。誰もがこうなる必要はありませんし、これを正しい練習法として勧めたいわけでもありません。人にはそれぞれ生活がありますし、ペースがあります。

大切なのは、好きなことに夢中になると、人はここまで深く入り込むことがある、ということです。

この心理変化を図にすると、次のようになります。

ドラムを仕事にしたら、新しい矛盾が生まれた

練習してきたことを人の役に立てたかった

留学後、日本に帰って私は島村楽器の講師になりました。もともと私が練習してきた理由の一つは、ドラムで生計を立てたい、そして自分が身につけたことを誰かの役に立てたいという思いがあったからです。

ですから、ドラムを仕事にできたこと自体は本来うれしいことでした。

ところが仕事する時間まで練習したくなった

ところが、ここで少し矛盾が出てきます。

本来は誰かのために使いたいと思っていた仕事の時間でさえ、「この時間も自分の練習に使えたら、もっと上手くなるのに」と感じることがあったのです。

これはなかなか不思議な感覚でした。せっかくドラムに関わる仕事をしているのに、その時間ですら自分の練習時間として見えてしまうことがある。つまり、夢中になりすぎた結果、目的と手段が少し入れ替わりそうになっていたのです。

「何のために上手くなりたかったのか?」

ここで私は、少し立ち止まる必要がありました。そもそも何のために上手くなりたかったのか。自分のためだけにひたすら上達し続けたいのか、それとも身につけたものを人に伝えたいのか。

もちろん両方あっていいのですが、バランスが崩れると苦しくなります。このあたりは、ドラムが上達しない理由を単なる才能ではなく考え方の面から捉えたこちらの記事とも通じる部分があります。

このままドラムだけで人生が終わってしまうと思った

好きだからこそ距離を取る必要があった

あるとき私は、「このままではドラムだけを叩きながら人生が終わってしまうのではないか」と感じました。

もちろんドラムは大好きですし、人生を変えてくれた大切な存在です。でも、人生にはドラム以外にも経験したいことがあります。好きなことがあるのは幸せですが、それしか見えなくなってしまうと、かえって人生全体が狭くなってしまうこともあります。

今振り返ると、ドラムを長く続けるためにも、少し距離を取る必要があったのだと思います。

あえて練習しない時間を作った

そこで私は、意図的に練習しない時間を作るようになりました。

時間が空いたら練習する、ではなく、時間が空いてもあえて練習しない。これは当時の自分にとって、少し強制的な調整でもありました。

自分の性格上、放っておくとどこまでも練習してしまう。だからこそ、意識して止める必要があったのです。

空いた時間=練習時間という考え方から離れる

そうやって少しずつ、「空いた時間=練習時間」という思考から離れていきました。好きなことをやめるのではなく、ちょうどよい距離感を探していく感覚です。

ドラムを続けるというのは、必ずしも四六時中ドラムのことだけを考えることではありません。むしろ長く続けるには、人生全体とのバランスが大切なのだと思います。

最終的にたどり着いた流れは、次のように整理できます。

今振り返ると、あれほど夢中になれたことが幸せだった

今の私は、当時のように1日10時間も練習する生活はしていませんし、同じ状態に戻りたいとも思っていません。

でも、人生の中で一つのことにあれほど夢中になれた経験は、本当に貴重だったと思っています。あの時間があったからこそ、今の自分がありますし、ドラム講師として伝えられることも増えました。

そして何より、何か一つのことに心から夢中になるという体験そのものが、人生の大きな財産だったと感じています。

最初は「ちょっとやってみたい」でした。そこから、感動があり、少しできる喜びがあり、もっと上手くなりたい気持ちが生まれ、挫折もあり、試行錯誤もあり、そして夢中になる時期がありました。

そのすべてを通して思うのは、人生を変える入り口は、案外とても小さいということです。理由は説明できなくても、なぜか惹かれる。なぜかやってみたい。そういう気持ちは、意外と大切なのかもしれません。

もし今、あなたが「なぜかわからないけれどドラムをやってみたい」と思っているなら、その感覚は軽く見ない方がいいかもしれません。大きな決意がなくても構いません。最初は小さな興味で十分です。

その小さな興味が、思っている以上に大きな出会いや、長く続く楽しさにつながることがあります。私にとってのドラムがそうだったようにです。

最後にもう一度お伝えすると、この記事は「毎日長時間練習するべき」という話ではありません。そうではなく、人が好きなことに夢中になっていくときには、感動、成功体験、上達の実感、もっとやりたいという欲求が少しずつ積み重なっていく、という話です。

そして最終的には、夢中になることと、人生のバランスを取ることの両方が大切なのだと思います。

あれほど夢中になれた時間は、今でも私の中でとても大切な記憶です。本当に幸せな時間だったと思います。

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