ドラムを始めたいと思うきっかけは、人それぞれだと思います。
好きなアーティストがかっこよくドラムを叩いていたり、ライブ映像でドラマーの演奏を見たり、好きな曲のドラムフレーズを聞いて「自分も叩いてみたい」と感じたりするところから始まる方が多いのではないでしょうか。
最初は、曲を聞いてリズムを覚えたり、口ずさんだり、楽譜を見たりしながらドラムに触れていきます。
しかし、実際に楽譜を見て叩こうとすると、思ったより難しく感じることがあります。
「楽譜は読めているはずなのに、体が動かない」
「エイトビートは叩けるけれど、フィルインになると崩れてしまう」
「音は合っているのに、なぜかかっこよく聞こえない」
こういった悩みは、ドラムを練習しているとよく出てきます。
その時に大切なのが、ドラムフレーズをひとつのかたまりとして見るのではなく、いくつかの要素に分けて考えることです。
ドラムフレーズは、細かく見ていくと8つの要素でできています。
この8つの要素を整理しておくと、練習でつまずいた時に「今、自分は何ができていないのか」が見つけやすくなります。
ドラムフレーズを分解すると練習の原因が見えやすくなる
ドラムがうまく叩けない時、多くの方は「このフレーズができない」と考えてしまいます。
もちろん、それも間違いではありません。
ただ、「できない」とひとまとめにしてしまうと、どこを直せばよいのかが見えにくくなってしまいます。
例えば同じエイトビートでも、音がそろわないのか、手順が分からないのか、足が入ると崩れるのか、グルーブが出ないのかによって、練習すべき内容は変わります。
そこで、ドラムフレーズを次の8つの要素に分けて考えてみます。
- ストローク
- 音符
- 手順
- リズムパターン
- フィルイン・ドラムソロ
- グルーブ
- テクニック
- 楽曲スタイル
この8つは、ドラムの土台から応用までを整理するための考え方です。
順番に見ていきましょう。
1. ストローク|音を出すための一番小さな原点
まず大切なのは、ストロークです。
ストロークとは、スティックをどのように動かして音を出すかということです。
ドラムでは、基本的に次の4種類のストロークがあります。
- フルストローク
- ダウンストローク
- タップストローク
- アップストローク
フルストロークは、大きく振り上げて大きく戻るストロークです。
ダウンストロークは、大きく振り下ろして低い位置で止めるストロークです。
タップストロークは、低い位置から小さく叩くストロークです。
アップストロークは、小さく叩いた後に次のアクセントに向けて振り上げるストロークです。
この4種類を知っておくことは大切ですが、初心者のうちは、まずダウンストロークとタップストロークを意識すると整理しやすくなります。
なぜなら、ゆっくりしたテンポで練習する時は、強い音をダウンストロークで叩き、小さい音をタップストロークで叩くことで、音量差を作りやすいからです。
テンポが遅い時は、ダウンストロークとタップストロークでそのまま打つことができます。
しかしテンポが上がってくると、ダウンストロークだけでは間に合わなくなり、自然にフルストロークのような動きに近づいていきます。
また、タップストロークの次にアクセントが来る場合は、スピードが上がるにつれてアップストロークに切り替わっていきます。
つまり、テンポが遅い時はダウンとタップで整理し、テンポが上がるとフルやアップの動きが必要になってくるということです。
練習の基本は、まずゆっくりしたテンポで行うことです。
そのため、最初はダウンストロークとタップストロークを使って、音量差をコントロールする練習から始めるとよいです。
ストロークが安定してくると、音の粒がそろいやすくなり、アクセントも自然に出しやすくなります。
ダブルストロークについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
2. 音符|ドラムフレーズの時間の設計図
ストロークに慣れてきたら、次に大切なのが音符です。
音符は、ドラムフレーズの時間の設計図のようなものです。
どのタイミングで何回叩くのかを決めるのが音符です。
ドラムでよく使う基本的な音符には、次のようなものがあります。
・4分音符
・8分音符
・3連符
・16分音符
・5連符
・6連符
・7連符
・8連符
まずは、1拍の中で1打から8打まで叩けるようにしておくことが、音符の基礎になります。
もちろん、2拍での連符、3拍での連符、4拍での連符など、さらに発展した考え方もあります。
ただ、最初の段階では、1拍の中にいくつ音を入れるのかを整理することが大切です。
例えば、基本的なエイトビートは主に8分音符で構成されています。
右手のハイハットが8分音符を刻み、左手のスネアが2拍4拍に入り、バスドラムが1拍3拍に入る形が基本です。
これが、エイトビートのとてもシンプルな形です。
エイトビートの基礎を整理したい方は、こちらの記事も参考にしてください。

一方で、フィルインになると、8分音符だけでなく、16分音符や3連符、6連符などが出てくることがあります。
特に重要なのは、次の4種類です。
・8分音符
・3連符
・16分音符
・6連符
この4種類は、リズムパターンやフィルインの中でとてもよく使われます。
8分音符で大きく流れを作り、16分音符で細かく動かし、3連符で跳ねる感じを作り、6連符でスピード感のあるフレーズを作ることができます。
16ビートについても学びたい方は、こちらも参考になります。

音符を理解するというのは、単に楽譜を読めるようになることだけではありません。
体の中で「今、どの細かさでリズムを感じているのか」を分かるようにすることです。
これができると、フレーズの安定感が大きく変わってきます。
3. 手順|同じ音符でも叩き方はひとつではない
音符に慣れてきたら、次は手順を考えていきます。
手順とは、右手と左手をどの順番で使うかということです。
同じ音符でも、手順が変わると叩きやすさや音の流れが大きく変わります。
例えば16分音符の場合、基本的な手順は「右左右左」です。
右手から始めて、右左を交互に叩いていく形です。
これはシングルストロークの基本です。
3連符の場合は、「右左右」「左右左」のように、1拍の中に3打を入れていきます。
このような基本手順に慣れてきたら、次は別の手順でも練習していきます。
例えば、すべてをシングルストロークで叩く方法もあります。
また、ダブルストロークとして「右右左左」のように叩くこともできます。
3連符にダブルストロークの考え方を当てはめると、1拍目は「右右左」、2拍目は「左右右」、3拍目は「左左右」のように、手順がずれていきます。
最初は少し難しく感じるかもしれませんが、こういった練習をすることで、手順の自由度が上がっていきます。
さらに、パラディドルやダブルパラディドルなどの手順もあります。
パラディドルは、右左左右、左右右左のように、シングルとダブルが組み合わさった手順です。
こういった手順を使うと、同じ音符でもアクセントの位置やフレーズの流れが変わります。
手順を変えることは、単なる手の運動ではありません。
ドラムセット上で移動しやすくしたり、フィルインを自然にしたり、音楽的な流れを作ったりするためにとても大切です。
基本手順に慣れてきたら、いろいろな手順を試してみてください。
手順には無限の可能性があります。
4. リズムパターン|手足を組み合わせて音楽にする
ストローク、音符、手順に慣れてきたら、次はドラムセット上でリズムパターンとして組み立てていきます。
リズムパターンとは、手足を組み合わせて、曲の土台になるビートを作ることです。
例えば、基本的なエイトビートでは、右手はハイハットで8分音符を刻みます。
左手は2拍4拍にスネアを叩きます。
バスドラムは1拍3拍に入ります。
この形が、基本的なエイトビートのリズムパターンです。
エイトビートはシンプルですが、ドラムの基本がたくさん詰まっています。
右手のハイハットで時間を刻み、左手のスネアでバックビートを作り、バスドラムで低音の土台を作ります。
この3つがうまく組み合わさることで、音楽としてのリズムが生まれます。
エイトビートの基礎練習については、こちらの記事も参考にしてください。

基本的な手順で叩けるようになったら、次は応用手順も考えていきます。
楽譜に書かれている通りに叩くことは大切です。
ただ、ドラムセットには配置があります。
ハイハット、スネア、タム、シンバルなどがそれぞれ違う位置にあるため、基本手順だけでは腕が動かしにくい場合があります。
そのような時は、自分の体が自然に動く手順を考えることも大切です。
「楽譜通りに叩くこと」と「体が自然に動くこと」の両方を考えることで、演奏はより安定していきます。
5. フィルイン・ドラムソロ|フレーズを展開する力
リズムパターンが叩けるようになってきたら、次はフィルインやドラムソロに応用していきます。
フィルインとは、リズムパターンの途中や区切りで入れる短いフレーズのことです。
曲の展開を作ったり、次のセクションへつなげたりする役割があります。
例えば、8ビートを叩いていて、4小節目の最後にタムを使ったフレーズを入れるような形です。
フィルインにも基本手順があります。
ただし、ドラムセットの配置によっては、基本手順では叩きにくいことがあります。
例えば、右手から始めると次のタムに移動しづらい場合や、左手から始めた方が自然に流れる場合もあります。
そのような時は、応用手順を使って叩きやすい形に変えていきます。
フィルインは、単に音数を増やせばよいというものではありません。
音符、手順、ストローク、アクセント、移動の流れが組み合わさってできています。
同じ16分音符のフィルインでも、手順が変われば雰囲気が変わります。
アクセントの位置が変われば、聞こえ方も変わります。
タムの移動の仕方が変われば、フレーズの流れも変わります。
ドラムソロも同じです。
速く叩くことや難しいことをするだけではなく、音符や手順、ストロークをどう組み合わせるかが大切です。
フィルインやドラムソロは、これまで練習してきた要素を自由に展開する場所だと考えると分かりやすいです。
6. グルーブ|人間が叩くから生まれるリズムのうねり
次に大切なのが、グルーブです。
グルーブとは、リズムのうねりやノリのことです。
メトロノームに正確に合わせることは、とても大切です。
テンポを安定させるためには、メトロノームを使った練習も必要です。
ただ、実際の音楽では、すべてを機械のように完全に正確に叩けばよいというわけではありません。
人間が叩く以上、そこには微妙な揺れや間が生まれます。
その微妙な違いが、グルーブになります。
例えば4分音符を叩く時に、メトロノームとジャストのタイミングで叩くこともできます。
少し前に叩くこともできます。
少し後ろに叩くこともできます。
ほんの少しの違いですが、音楽の印象は大きく変わります。
2拍4拍のスネアを少し後ろに感じると、重たくどっしりした印象になります。
反対に、少し前に感じると、前に進むような勢いが出ることもあります。
バスドラム、スネア、ハイハットの位置関係によっても、グルーブは変わります。
例えば、バスドラムは少し前に感じて、スネアは少し後ろに感じると、どっしりしたノリになることがあります。
また、ハイハットの音色もグルーブに大きく関わります。
ハイハットのエッジを叩くと、「チャッ、チャッ」という開いた感じの音になります。
トップを叩くと、「チッ、チッ」というタイトな音になります。
左足でハイハットをしっかり閉じるのか、少しだけ緩めるのかによっても、音の長さや雰囲気が変わります。
グルーブで大切なのは、タイミングだけではありません。
音色、音価、音質、リズムの間も関係しています。
表で感じているのか。
裏で感じているのか。
16分音符の2個目を強く感じているのか。
16分音符の4個目を強く感じているのか。
こういった感じ方によって、同じリズムでもノリが変わります。
さらに、バンド全体で考えると、ドラムとベースの関係も重要です。
ドラムが少し前に行くのか、ベースが少し後ろにいるのか。
メンバーそれぞれが持っているタイム感が合わさることで、そのバンド独自のグルーブが生まれます。
これは、機械的な正確さだけでは作れない音楽の魅力です。
7. テクニック|楽に叩き、表現を広げるための方法
次の要素は、テクニックです。
テクニックというと、速く叩くことや難しいフレーズを叩くことをイメージする方も多いかもしれません。
もちろん、それもテクニックの一部です。
しかし本来テクニックは、楽に叩き、音量や音色をコントロールし、表現を広げるための方法です。
例えば、速いテンポのエイトビートでは、右手でハイハットを刻み続けるのが大変になることがあります。
力だけで叩こうとすると、すぐに疲れてしまいます。
そのような時に、アップダウン奏法を使えると、右手の動きが楽になります。
大きく無理に振るのではなく、体の動きやスティックの反動を使いながら叩けるようになると、速いテンポでも安定しやすくなります。
また、プッシュプル奏法やモーラー奏法などを取り入れることで、ダイナミクスもコントロールしやすくなります。
大きな音を出す。
小さな音を出す。
なめらかに音をつなげる。
アクセントを自然に出す。
こういったことができると、演奏の表情が大きく変わります。
フィルインも、ただ音を並べるだけではなく、強弱をつけることで躍動感が出ます。
ドラムソロも、音量の差や流れを作ることで、単調ではなくメロディックに聞こえるようになります。
テクニックは、見た目を派手にするためだけのものではありません。
音楽を楽に、自然に、そして豊かに表現するための道具です。
ストロークやダブルストロークの理解を深めたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
8. 楽曲スタイル|学んだ要素を音楽の中で使う
最後の要素は、楽曲スタイルです。
ここまで、ストローク、音符、手順、リズムパターン、フィルイン、グルーブ、テクニックについて見てきました。
しかし、これらは練習だけで終わらせるものではありません。
最終的には、実際の音楽の中で使えるようにしていくことが大切です。
ドラムが使われる音楽スタイルはたくさんあります。
・ロック
・ポップス
・ジャズ
・フュージョン
・ファンク
・アフロキューバン
・ブラジリアン
・カリビアン
・アフリカン
それぞれのスタイルには、独自のリズムやグルーブがあります。
ロックにはロックらしい力強さがあります。
ジャズにはスウィングの流れがあります。
ファンクには16分音符を感じた細かいグルーブがあります。
ラテンやブラジリアンには、クラーベや独特のリズムの重なりがあります。
いろいろなスタイルを学ぶことで、自分の中にリズムの引き出しが増えていきます。
そして、それらを組み合わせることで、自分らしいオリジナリティのある演奏につながります。
曲を練習する時も、ただコピーするだけではなく、「この曲では8つの要素のうち、何が大切なのか」を考えると理解が深まります。
例えば、3連系の曲では音符の感じ方やグルーブが重要になります。
3連系ビートについて学びたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

楽曲スタイルを学ぶことは、単にジャンルを覚えることではありません。
これまで練習してきた要素を、実際の音楽の中でどう使うかを学ぶことです。
うまくいかない時は8つの要素に戻って考える
ドラムの練習でつまずいた時は、何となく同じフレーズを繰り返すだけではなく、原因を分けて考えることが大切です。
「できない」と感じた時は、次のように8つの要素に戻って確認してみましょう。
・音がそろわない → ストロークの問題かもしれない
・リズムが不安定 → 音符の理解や感じ方の問題かもしれない
・手が迷う → 手順の問題かもしれない
・ビートが崩れる → リズムパターンの組み立ての問題かもしれない
・フィルインがぎこちない → 移動や手順の問題かもしれない
・ノリが出ない → グルーブの問題かもしれない
・速く叩けない、疲れる → テクニックの問題かもしれない
・曲らしく聞こえない → 楽曲スタイルの理解が足りないかもしれない
このように分けて考えると、練習する内容がはっきりしてきます。
例えば、フィルインがうまくいかない時も、音符が分かっていないのか、手順が合っていないのか、タムへの移動が難しいのかによって、練習方法は変わります。
グルーブが出ない時も、タイミングの問題なのか、音色の問題なのか、ハイハットの開き方の問題なのかを分けて考えることができます。
ドラムは、才能だけで上達するものではありません。
要素に分けて、ひとつずつ整理していくことで、必ず練習の方向性が見えてきます。
まとめ|ドラムの原点は、要素を分けて積み上げること
ドラムフレーズは、一見すると複雑に見えることがあります。
特に、楽譜にたくさん音符が並んでいたり、速いフィルインが出てきたりすると、「これは難しそう」と感じるかもしれません。
しかし、ドラムフレーズを分解してみると、次の8つの要素でできています。
- ストローク
- 音符
- 手順
- リズムパターン
- フィルイン・ドラムソロ
- グルーブ
- テクニック
- 楽曲スタイル
まずは、スティックをどう動かすのかというストロークがあります。
次に、どのタイミングで叩くのかという音符があります。
その音符を、右手と左手のどの順番で叩くのかという手順があります。
それをドラムセット上で組み合わせることで、リズムパターンになります。
さらに、フィルインやドラムソロでフレーズを展開していきます。
そして、グルーブによって人間らしいリズムのうねりが生まれます。
テクニックによって、楽に叩きながら表現の幅を広げることができます。
最後に、それらを楽曲スタイルの中で使うことで、音楽としての演奏になっていきます。
うまくいかない時は、「自分はどの要素で止まっているのか」を確認してみてください。
全部を一度に直そうとしなくても大丈夫です。
ひとつずつ分解して、順番に積み上げていけば、ドラムフレーズは必ず整理できるようになります。
ドラムの課題を整理しながら練習したい方へ
ドラムを独学で練習していると、自分がどこでつまずいているのか分かりにくいことがあります。
「音符は合っているはずなのに、なぜかノリが出ない」
「フィルインになると手順が分からなくなる」
「速いテンポになると右手が疲れてしまう」
このような悩みは、原因を整理することで練習しやすくなります。
川島広明ドラム教室では、ストローク、音符、手順、リズム、フィルイン、グルーブ、テクニックなどを整理しながら、一人ひとりに合わせてレッスンしています。
初心者の方も、経験者の方も、今の課題を分解しながら練習していくことで、上達の道筋が見えやすくなります。
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ドラムは、感覚だけでなく、要素を分けて考えることで上達しやすくなります。
焦らず、ひとつずつ整理しながら練習していきましょう。
ドラムは、楽譜や動画を見ているだけでは分かりにくい部分がたくさんあります。
たとえば、どんな音を出せばいいのか、どのくらいの力加減で叩けばいいのか、曲に合わせるときに何を意識すればいいのかなど、実際に叩きながら覚えていくことが大切です。
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