最近、クラシック音楽を聴くことが増えました。
私はドラマーなので、これまでは自然と、ドラムセットが使われている音楽を中心に聴いてきました。
ロック、ポップス、ジャズ、フュージョンなど、ドラムのリズムやフレーズを追いかけながら音楽を聴くことが多かったと思います。
そのため、現代的なドラムセットがほとんど登場しないクラシック音楽は、どこか自分の演奏とは離れた音楽のように感じていました。
しかし最近、ベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」を改めて聴き、これまでとは違う感覚を覚えました。
音が耳から入り、頭を通過して、そのまま心の奥まで届いてくるように感じたのです。
どのようなメロディーなのか、どのような和音なのか、どのような構成なのか。
そうした理屈を考える前に、音楽そのものが心に入ってきました。
なぜ若い頃ではなく、今になってクラシック音楽がこれほど心に染みるのでしょうか。
この記事では、ドラマーとして音楽を聴いてきた私が、ベートーヴェンの「悲愴」を通して感じたクラシック音楽の魅力について書いてみたいと思います。
ドラマーの私がクラシック音楽をあまり聴いてこなかった理由
クラシック音楽の多くは、現在のロックやポップスのようなドラムセットが中心になっている音楽ではありません。
そのため、ドラマーとして練習や演奏の参考になる音楽を探していた私は、クラシックよりもドラムがはっきりと聴こえる音楽を選ぶことが多くなりました。
ハイハットがどのように刻まれているか。
バスドラムとベースがどのように重なっているか。
スネアの位置や音色はどうなっているか。
フィルインがどのように曲をつないでいるか。
ドラマーとして音楽を聴いていると、どうしてもこのような部分へ意識が向きます。
もちろん、クラシック音楽にも打楽器は使われています。
ティンパニ、シンバル、大太鼓、小太鼓、トライアングルなどが、曲の迫力や緊張感を作る重要な役割を担っています。
ただ、現代のドラムセットのように、一人の演奏者が両手両足を使ってリズム全体を支える形とは、楽器の編成や役割が異なります。
私は以前まで、自分の演奏に直接関係しない音楽を聴く時間を、あまり作ってこなかったのかもしれません。

ドラムが使われる音楽ジャンルや、それぞれの特徴については、以下の記事でも紹介しています。
音が耳から入り、頭を通過して心まで届く
クラシック音楽を聴いていて特に不思議なのは、分析しようという気持ちがあまり起こらないことです。
普段の私は、音楽を聴きながらリズムやテンポ、フレーズ、構成を考えることがあります。
ドラマーとして長く音楽に関わっていると、純粋に聴いているつもりでも、どこかで演奏を分析してしまいます。
ところが、ベートーヴェンの「悲愴」を聴いているときは、そうした考えが薄くなります。
音が耳から入り、頭を通過し、心の奥まで直接届いてくるような感覚があります。
分析する前に、まず心が動くのです。

これは、音楽を頭で理解することに意味がない、という話ではありません。
音楽理論や構成を知ることで、曲の見え方が深くなることもあります。
なぜここで緊張感が生まれるのか。
なぜ同じメロディーが戻ってきたときに、最初とは違って聴こえるのか。
そうした仕組みを知ることも、音楽の面白さです。
一方で、理屈を一度手放し、音楽が自分の中へ入ってくるのをそのまま受け止める聴き方もあります。
理解する聴き方と、感じる聴き方。
どちらか一方が正しいのではなく、両方が音楽を深くしてくれるのだと思います。
音楽を理屈だけで捉えず、感覚を使って聴くことについては、こちらの記事でも詳しく書いています。
ドラマーに音楽理論が必要なのかについては、以下の記事も参考にしてください。
行ったことのない昔のヨーロッパが心に浮かぶ
私はまだヨーロッパへ行ったことがありません。
それでもクラシック音楽を聴いていると、昔のヨーロッパの風景が心の中に浮かんできます。
石畳の道。
古い教会。
ろうそくの灯り。
森や田園。
馬車が通る街。
雪の積もった静かな夜。
もちろん、実際のヨーロッパが私の想像どおりだったとは限りません。
クラシック音楽を聴いた人が、必ず同じ景色を思い浮かべるわけでもありません。
それでも、音楽に自分の知識や記憶、映像で見た風景などが結びつき、心の中に一つの世界が作られていきます。

音楽は、目に見えないものです。
しかし音楽を聴くことで、自分が行ったことのない場所や、生きたことのない時代まで想像できます。
その感覚は、本や映画を通して知らない世界に触れることと、どこか似ているのかもしれません。
なぜ若い頃より今のほうが心に染みるのか
若い頃に同じ曲を聴いても、今ほど深くは感じなかったかもしれません。
音楽そのものは同じでも、聴いている自分は変化します。
年齢を重ねると、思いどおりにならなかった経験や、努力しても結果が出なかった経験が少しずつ増えていきます。
人との出会いや別れもあります。
仕事や家庭への責任も増えていきます。
一方で、何気ない日常や小さな喜びの大切さにも、少しずつ気づくようになります。
人生には、明るさだけでなく暗さもあります。
喜びだけでなく、苦悩や孤独もあります。
だからこそ、音楽の中にある複雑な感情が、自分の経験と結びつくのかもしれません。
「悲愴」の中に感じる激しさや静けさも、若い頃とは違う意味で心に届いているように思います。
ただし、年齢を重ねなければクラシック音楽が理解できない、ということではありません。
若い人には、若い時期だからこそ感じられるものがあります。
同じ作品でも、10代、20代、40代、60代では、違った音楽に聴こえる可能性があります。
一つの作品を人生の中で何度も聴き直すことも、音楽の楽しみ方の一つなのだと思います。
音楽による感動が、練習を続ける力になることについては、以下の記事でも触れています。
ドラマーがクラシック音楽から学べること
クラシック音楽を聴くことは、ドラムの手足を速く動かす練習ではありません。
それでも、ドラマーが学べることはたくさんあります。
たとえば、音量の変化です。
小さな音から少しずつ大きくなり、クライマックスへ向かっていく流れ。
激しい音の後に訪れる静けさ。
一音を鳴らした後の余韻。
音を鳴らさない時間の緊張感。
これらは、ドラム演奏にも深く関係しています。
同じリズムを叩いていても、最初から最後まで同じ音量で演奏する場合と、強弱や流れをつけて演奏する場合では、音楽の伝わり方がまったく違います。
また、クラシック音楽では、さまざまな楽器が主役と伴奏を入れ替えながら進んでいきます。
弦楽器が前に出た後、管楽器がそれを受け継ぐ。
一つの旋律に、別の楽器が応答する。
全体が静かになった後、オーケストラ全体が大きく動き出す。
このような流れを聴くことは、バンドの中でドラムがどのような役割を担うべきかを考えるうえでも役立ちます。
ドラマーは、常に目立てばよいわけではありません。
ボーカルを支えるときもあれば、曲を大きく動かすときもあります。
音数を減らしたほうが伝わる場面もあれば、強い一打が必要な場面もあります。

演奏技術だけでなく、音楽全体を表現する力については、以下の記事でも解説しています。
また、ドラムが上達するためには、演奏するだけでなく、音楽をどのように聴くかも重要です。
理論を知らなくてもクラシック音楽は楽しめる
クラシック音楽には、難しそうなイメージがあるかもしれません。
作曲家の生涯や時代背景、形式、和声などを知らなければ楽しめないと思う人もいるでしょう。
しかし、最初から勉強する必要はないと思います。
気になった曲を、まず流してみる。
途中でよく分からなくても気にしない。
好きな部分だけを繰り返し聴く。
頭に浮かぶ風景や物語を自由に楽しむ。
それだけでも十分です。
同じ曲を朝に聴く場合と、夜に聴く場合でも印象は変わります。
演奏家が変われば、テンポや音の強さ、間の取り方も変わります。
最初は一つの演奏だけを聴き、好きになってから別の演奏を聴き比べてみるのも面白いと思います。
音楽理論は、音楽を楽しむための入場券ではありません。
興味が出てきた後で、「なぜここで心が動いたのだろう」と調べるための道具として使うこともできます。

ドラムのある音楽と、ドラムのない音楽を分けない
これまで私は、ドラマーとしてドラムが使われている音楽を中心に聴いてきました。
しかし、音楽の価値は、自分が演奏する楽器が使われているかどうかだけでは決まりません。
ロックにはロックの魅力があります。
ジャズにはジャズの魅力があります。
ポップスにも、クラシックにも、それぞれ違う良さがあります。
どのジャンルが上で、どのジャンルが下という話ではありません。
ドラムが使われていない音楽を聴くことで、かえってドラム以外の音へ意識を向けやすくなることがあります。
歌の呼吸。
ピアノのタッチ。
弦楽器の音の重なり。
管楽器の響き。
音が消えた後の空間。
そうしたものを聴くことで、音楽全体を捉える耳が少しずつ育っていくのではないかと思います。
音楽でリズムが果たす役割や、リズム以外の要素との関係については、こちらの記事でも紹介しています。
いつかヨーロッパで音楽が生まれた空気に触れたい
私はヨーロッパへ行ったことがありません。
いつかウィーンやボンなど、クラシック音楽と深い関わりを持つ土地を訪れてみたいと思っています。
音楽を聴きながら想像していた石畳や建物、街の空気を、実際に自分の目で見てみたいです。
もちろん、現在のヨーロッパは、ベートーヴェンが生きていた時代とは異なります。
それでも、音楽が生まれた土地に立つことで、今までとは違った聴こえ方が生まれるかもしれません。
実際の風景を見た後に「悲愴」を聴いたとき、自分の中にどのような感情が浮かぶのか。
それも、いつか経験してみたいことの一つです。
まとめ|音楽は理屈を超えて人生に届く
私が特に好きなクラシック音楽は、ベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」です。
「悲愴」には、悲しみだけでなく、苦悩、激しさ、強さ、静けさ、そしてかすかな希望を感じます。
今の年齢だからこそ、若い頃とは違う形で心に届いているのかもしれません。
これからさらに年齢を重ねてから聴けば、また違った音楽として感じられる可能性もあります。
私はこれまで、ドラマーとしてドラムが使われる音楽を中心に聴いてきました。
しかし、ドラムセットが中心ではないクラシック音楽からも、強弱、緊張と解放、静寂、アンサンブル、曲全体の流れなど、多くのことを学べます。
音楽を理解することも大切です。
しかし、すべてを理屈で説明できなくても、音楽が心へ深く届くことがあります。
これからはドラムが使われているかどうかにこだわらず、クラシックを含め、さまざまな音楽を聴いていきたいと思います。
そしていつかヨーロッパを訪れ、音楽を通して想像してきた風景や空気に、実際に触れてみたいです。
ドラムは、楽譜や動画を見ているだけでは分かりにくい部分がたくさんあります。
たとえば、どんな音を出せばいいのか、どのくらいの力加減で叩けばいいのか、曲に合わせるときに何を意識すればいいのかなど、実際に叩きながら覚えていくことが大切です。
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