こんにちは、ドラム講師の川島です。
ドラムでアドリブや即興演奏をするとき、皆さんは頭の中で何を考えているでしょうか?
「何かかっこいいフレーズを叩かなきゃ」
「練習してきたあのフレーズを今日は絶対に使おう」
「ドラムソロになったけど、何を叩けばいいんだろう……」
こんなことを考えてしまう方も多いと思います。
私自身、ドラムでインプロビゼーションやアドリブをするとき、どのような頭の状態で演奏するのが一番自然なのかを長い間考えてきました。
その結果、今のところ一番近いと感じているのが、
「日本人が日本語で普通に会話しているときの状態」
です。
即興演奏では、覚えているフレーズを次々と披露すること以上に、その瞬間に鳴っている音楽を聴き、それに自分がどう反応するかがとても重要だと私は考えています。
ドラムのアドリブで「何を叩こう」と考えすぎていませんか?
ドラムソロやセッションになると、急に頭の中が忙しくなることがあります。
- 次はどのフレーズを使おう
- もっと難しいことを叩いたほうがいいかな
- 練習したフレーズをどこかで入れたい
- かっこいいと思われる演奏をしなければ
こうして「自分が何を叩くか」ばかりを考えていると、意外と周りの演奏が聴こえなくなってしまうことがあります。
もちろん、普段からいろいろなフレーズを練習して、演奏の引き出しを増やしておくことは大切です。
ただし、アドリブの本番になったら、その引き出しの中を必死に探すことよりも、まず今鳴っている音楽を聴くことが重要です。

つまり、アドリブでは「何を叩こう?」という意識だけではなく、
「今、自分には何が聴こえているだろう?」
という方向へ意識を向けることが大切だと思います。
グルーヴについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
即興演奏は日本語で会話している状態に似ている
私が即興演奏を説明するとき、一番わかりやすいと思っているのが「会話」です。
私たちは普段、人と話すときに、
「昨日覚えたこの文章を今日は絶対に使おう」
とは、ほとんど考えていないと思います。
例えば久しぶりに知り合いと会ったら、自然に、
「久しぶり!」
という言葉が出てくるかもしれません。
逆に、知らない人から突然話しかけられたら、
「何でしょう?」
と、少し警戒した反応になるかもしれません。
これは事前に返事を準備していたわけではありません。
相手の言葉、その場の状況、自分の気持ちなどを受け取って、その瞬間に自然な反応が出ています。
私は、ドラムのアドリブやインプロビゼーションも、これに非常に近いと考えています。

つまり、
相手の演奏を聴く → 何かを感じる → ドラムで反応する
という流れです。
日本語を話すときに、一つひとつ文法を思い出しながら会話していないのと同じように、即興演奏も徐々に「考えて演奏する状態」から「自然に反応する状態」へ近づいていくのが理想だと思っています。
アドリブで最も大切なのは「周りの音への反応」
バンドで演奏しているときは、自分以外にもさまざまな音が鳴っています。
- ベース
- ギター
- ピアノ
- ボーカル
- 管楽器
- パーカッション
こうした音を聴いて、自分がどう感じるのか。
そして、その感覚に対してドラムでどう反応するのか。
ここが即興演奏では非常に重要になります。
例えばベースが4ビートのウォーキングベースを弾き始めたとします。
ジャズをある程度聴いてきた人であれば、そのベースを聴いた瞬間に、自然とシンバルでスイングのリズムを演奏したくなることがあります。
これは、
「ウォーキングベースが来たから、教科書の何ページに書いてあったパターンを使おう」
と頭の中で計算しているわけではありません。
音を聴いた結果として、自分の中から反応が出てきているわけです。
例として以下の曲の2:14あたりからのピアノのフレーズに対して、ドラムが同じリズムで反応しています。

こうした反応を増やすためには、テクニック練習だけでなく、普段からたくさんの音楽を聴いておくことも重要です。
ドラムが上達するための音楽の聴き方については、こちらの記事でも紹介しています。
ドラムソロも、それまでの音楽の続きを演奏する
ドラムソロになると、急に「自分の時間が来た」と考えてしまうことがあります。
しかし私は、ドラムソロだけを完全に切り離して考えないほうが自然だと思っています。
ドラムソロになる前には、当然それまでの音楽があります。
- どのくらいの音量だったのか
- どんなリズムだったのか
- どんな雰囲気だったのか
- 前のソリストがどんな演奏をしていたのか
- 曲全体がどこへ向かっているのか
こうした流れを受け取ったうえでドラムソロに入ると、音楽が自然につながります。

逆に、それまで静かで繊細な演奏だったのに、ドラムソロになった瞬間だけ突然まったく別の雰囲気になってしまうと、音楽の流れが切れてしまう場合があります。
もちろん、意図的に雰囲気を大きく変えることも音楽表現の一つです。
大切なのは、「なぜそこでその演奏をするのか」が音楽の流れの中にあるかどうかです。
ジャズの4バースは「楽器同士の会話」がわかりやすい
楽器同士の会話という考え方が、わかりやすく表れるのがジャズの4バースです。
4バースとは、簡単に言えば、ソリストとドラマーなどが4小節ずつ交互にソロを取る演奏方法です。
例えば、
ギター4小節 → ドラム4小節 → ギター4小節 → ドラム4小節
というように、交互に演奏していきます。

このとき、最初にギターが演奏した4小節をドラムがしっかり聴き、そのアイデアに答えるように4小節演奏すると、非常に自然な流れになります。
ギターがリズミックなフレーズを演奏したのであれば、そのリズムをヒントにドラムで返してもいいでしょう。
短い音を中心に演奏していたのであれば、自分も短いフレーズで答えてもいいかもしれません。
あるいは、相手のアイデアを少し変形させて返す方法もあります。
まさにコール&レスポンスです。
ジャズドラムの基本についてはこちらの記事でも解説しています。
「お元気ですか?」「いいえ、結構です」では会話にならない
例えばジャズギターが、繊細で間を生かした4小節のソロを演奏したとします。
その直後にドラマーが、
「自分はロックが得意だから」
という理由だけで、前の演奏とはまったく関係のない激しいロック系のフィルインを4小節演奏したらどうでしょうか。
もちろん、ジャズの中にロック的なフレーズを入れること自体が悪いわけではありません。
意図的にコントラストを作るのであれば、それも立派な表現です。
問題なのは、前の演奏をまったく聴かずに、自分が準備していたフレーズをそのまま演奏してしまうことです。

これは日本語の会話で例えるなら、
「お元気ですか?」
と聞かれているのに、
「いいえ、結構です」
と答えるようなものです。
日本語としては間違っていなくても、会話としては噛み合っていません。
ドラムでも同じです。
フレーズ単体ではかっこよくても、音楽の前後関係に合っていなければ、セッション全体としては不自然になることがあります。
即興演奏では「頭を空っぽにする」ことが大切
そこで私が即興演奏をするときに意識しているのが、できるだけ頭を空っぽにすることです。
ただし、これは、
「何も練習しなくていい」
「フレーズを覚えなくていい」
「テクニックは必要ない」
という意味ではありません。
むしろ逆です。
普段からたくさん練習して、たくさん音楽を聴き、いろいろなフレーズやリズムを経験しておく必要があります。
それらを自分の中に十分に蓄積したうえで、本番では一つひとつを意識的に取り出そうとしないということです。

これは言葉とまったく同じです。
私たちは子どもの頃から、たくさん日本語を聞いて、話して、間違えて、また話してきました。
その積み重ねがあるため、大人になった今は、
「主語の次は述語を入れて……」
などと考えなくても会話ができます。
ドラムも同じで、練習したフレーズやリズム、テクニック、これまで聴いてきた音楽、セッション経験などが身体の中に入ってくると、徐々にその場に必要なものが自然に出てくるようになります。
私は、その瞬間に自然に出てくるものこそ、その時点での自分自身の音楽的な実力なのではないかと考えています。
上級者になるほど大切になる表現力については、こちらの記事も参考にしてください。
決められたフレーズを演奏することが悪いわけではない
ここで誤解してほしくないのですが、私は決められたフレーズを演奏することを否定しているわけではありません。
音楽には、あらかじめ演奏内容をしっかり決め、それを何度も練習して完成度を高めてライブで披露するスタイルもたくさんあります。
楽譜に忠実に演奏することが求められる音楽もあります。
私自身、そのような音楽も大好きです。
また、即興演奏のためにフレーズを練習したり、ルーディメンツを覚えたりすることも非常に重要です。
ルーディメンツをフィルインやソロへ応用する方法についてはこちらでも紹介しています。
今回お話ししているのは、あくまで「アドリブをするときの頭の使い方」です。
普段はしっかり練習する。
そしてセッションになったら、その練習したものを「絶対に使おう」とするのではなく、音楽を聴いて自然に出てくるものに任せてみる。
このバランスが大切だと思っています。
アドリブを上達させるなら、人と演奏する経験を増やす
では、自然なアドリブができるようになるには、どのような練習をすればいいのでしょうか。
もちろん、いろいろな音楽を聴くことは大切です。
ジャズ、ロック、ファンク、ラテン、ポップスなど、さまざまなジャンルを聴くことで、自分の中の音楽的な語彙は増えていきます。
ただ、私がそれ以上に重要だと感じているのが、実際に人と一緒に演奏する経験です。
これは言語で言えば、実際に人と会話する経験です。
本をたくさん読んで言葉を覚えることはできます。
しかし、会話が上手になるためには、実際に人と話す必要があります。
話しているうちに、
- 相手の話を聞く
- 間を感じる
- 相手の意図を感じる
- 適切なタイミングで返す
- 相手によって話し方を変える
といった能力が身についていきます。
セッションも同じです。

例えば、こんな練習がおすすめです。
- いろいろなジャンルの音楽を聴く
- 実際にセッションへ参加する
- できるだけ多くの演奏者と一緒に演奏する
- 相手のフレーズをドラムで真似してみる
- 相手のリズムに対して違うリズムで返してみる
- 4小節ずつコール&レスポンスをしてみる
- 自分の演奏を録音して、相手との会話が成立していたか確認する
こうした経験を繰り返していくことで、少しずつ音楽に対する「反応」が磨かれていきます。
動画を見るだけでなく、実際に人と演奏することの重要性についてはこちらの記事でも書いています。
まとめ|アドリブは「自分を見せる」より「音楽と会話する」
今回は、ドラムでアドリブや即興演奏、インプロビゼーションをするときに、どのような意識で演奏すると自然な流れになりやすいのかについてお話ししました。
もちろん、普段の練習ではフレーズの引き出しを増やすことも大切です。
リズム、ルーディメンツ、テクニック、さまざまなジャンルの演奏方法などをしっかり練習して、自分の中にたくさん蓄積しておきます。
しかし、実際にセッションが始まったら、
「どのフレーズを使おう?」
と自分の頭の中ばかりを見るのではなく、まず周りの音を聴いてみてください。
- 今、相手は何を演奏しているのか
- 今、音楽はどんな雰囲気なのか
- 今、この曲はどこへ向かっているのか
- それを聴いて自分は何を感じたのか
そして、その瞬間に感じたものをドラムで返してみます。
即興演奏とは、覚えたフレーズを披露する場所というより、その瞬間に鳴っている音楽を聴き、それに自分なりに反応する「楽器による会話」だと私は考えています。
良いアドリブをするためには、フレーズを増やすだけではなく、たくさんの音楽を聴き、そして何より実際に人と一緒に演奏する経験を増やすことが大切です。
最初から自由自在に反応するのは難しいと思います。
ですが、人との会話と同じように、セッションの経験を重ねていけば少しずつ反応できる範囲が広がっていきます。
一人でフレーズを練習するだけではなく、実際に人と音を出しながら反応する経験を増やしたい方は、ぜひ体験レッスンへお越しください。






