【ドラム8要素その7】最強のテクニック「モーラー奏法」で楽に高速フレーズを叩こう!

レッスン

速いフレーズを叩こうとすると、腕に力が入ってしまう。
連打をするとすぐに疲れてしまう。
手数を増やそうとすると、音が硬くなったり、リズムが詰まったりしてしまう。

ドラムを練習していると、このような悩みにぶつかる方は多いです。

特に、ダブルストローク、速いフィルイン、シャッフル、ゴーストノート、16ビートの細かいフレーズなどは、力だけで叩こうとするとすぐに限界が来ます。

そこで大切になるのが、今回ご紹介するモーラー奏法です。

モーラー奏法は、力で無理やり叩く奏法ではありません。
腕の自然な動きと、スティックのリバウンドを使って、少ない力で効率よく音を出すためのドラムテクニックです。

簡単に言うと、1回の腕の動きで複数の音につなげる奏法です。

速く叩くための特別な裏技というより、体にとって自然な流れで音を出すための考え方です。身につけると、速いフレーズが楽になるだけでなく、音の流れやグルーヴもなめらかになっていきます。


モーラー奏法とは?力ではなくリバウンドを使う奏法

モーラー奏法とは、腕の振り、脱力、スティックのリバウンドを使って、効率よく音を出す奏法です。

普通にドラムを叩こうとすると、1打ごとに腕や手首を使って「叩きにいく」感覚になりやすいです。

もちろん、最初はそれでも構いません。
しかし、テンポが速くなったり、音数が増えたりすると、1打ずつ力で叩きにいく方法ではだんだん追いつかなくなります。

モーラー奏法では、1打ずつ力で叩くのではなく、腕の自然な振りを使います。

肩から肘、手首、指先へと、エネルギーの波を伝えていくようなイメージです。
その流れの中でスティックが打面に当たり、跳ね返る力を利用して次の音につなげていきます。

つまり、モーラー奏法は、

力で叩く奏法ではなく、リバウンドを邪魔しない奏法

とも言えます。

1打目はしっかり腕を下ろして音を出します。
しかし、そのあとも力を入れ続けるのではなく、すぐに脱力します。

すると、スティックは自然に跳ね返ります。
その跳ね返りを使って、2打目、3打目を自然に鳴らしていきます。

この感覚が身につくと、腕一振りで複数打につながるようになります。


モーラー奏法が生まれた歴史と背景

モーラー奏法は、サンフォード・A・モーラーという人物によって体系化された奏法として知られています。

もともとは、ドラムセットのためだけに生まれた奏法というより、スネアドラムや軍楽隊の演奏の中で発展してきた考え方です。

軍楽隊などでは、長時間にわたって大きな音を出し続ける必要があります。
しかも、ただ大きな音を出すだけではなく、細かいリズムや連打も安定して演奏しなければなりません。

そこで、腕や手首の力だけで叩いていると、すぐに疲れてしまいます。
長く演奏するほど、力任せの叩き方には限界が出てきます。

そこで重要になったのが、体の自然な動きとスティックの跳ね返りを活かす考え方です。

力を入れっぱなしにするのではなく、腕の重みを使って叩き、打面から返ってくるリバウンドを利用する。
このようにすることで、少ない力でも大きな音や連続した音を出しやすくなります。

現代のドラムセット演奏でも、モーラー奏法はさまざまな場面で使われています。

たとえば、

  • 速いフィルイン
  • シャッフル
  • ゴーストノート
  • アクセント移動
  • 16ビート
  • ダブルストローク
  • ルーディメンツ
  • 高速フレーズ

などです。

モーラー奏法は、単に「昔のスネアドラムの奏法」というものではありません。
現代のドラム演奏でも、体に無理なく、音をなめらかにつなげるためにとても役立つテクニックです。


モーラー奏法の最大のメリットは「省エネで叩けること」

モーラー奏法の一番大きなメリットは、省エネで叩けることです。

ドラムは、力を入れれば大きな音が出ると思われがちです。
しかし、実際には力みすぎるとスティックの動きが止まり、リバウンドも使えなくなります。

その結果、腕が疲れやすくなり、速いフレーズも叩きにくくなります。

モーラー奏法では、1打目に使ったエネルギーを、2打目、3打目につなげていきます。

1打目で腕を下ろす。
そのあとすぐに脱力する。
スティックが跳ね返る。
そのリバウンドを利用して、次の音につなげる。

この流れができると、毎回すべての音を自分の力で叩きにいく必要がなくなります。

肩から肘、手首、指先へと、エネルギーが波のように伝わっていくイメージです。
腕全体を1つのかたまりとして固めるのではなく、しなやかにエネルギーを流していきます。

すると、音が硬くならず、なめらかにつながります。

速く叩くためにも有効ですが、それだけではありません。
モーラー奏法は、ドラムの音を「点」ではなく「流れ」としてつなげるためにも大切です。


最初に練習すべき基本練習は「モーラートリップレッツ」

モーラー奏法を練習する時に、最初に取り組みたい基本練習がモーラートリップレッツです。

トリップレッツとは、3連符のことです。
1拍の中に3つの音を入れるリズムですね。

モーラートリップレッツでは、この3つの音にそれぞれ役割があります。

1打目は、DOWN
腕を下ろして、大きな音を出します。

2打目は、TAP
1打目のリバウンドを使って、小さく自然に鳴らします。

3打目は、UP
次の1打目に向かう準備をしながら、アップストロークの中で鳴らします。

つまり、

DOWN → TAP → UP

という流れです。

ここで大事なのは、2打目と3打目を自分で強く叩きにいかないことです。

音は3つ鳴っています。
しかし感覚としては、1打目だけを叩いているような状態に近くなります。

1打目で腕を下ろし、そのエネルギーを使って2打目、3打目につなげる。
これがモーラートリップレッツの大切な考え方です。

この練習は、モーラー奏法の土台になります。
速いフレーズを叩く前に、まずはこの「楽に3打が出る感覚」を身につけていきましょう。


モーラートリップレッツの練習方法

ここからは、モーラートリップレッツの練習方法を順番に見ていきましょう。

最初から速く叩く必要はありません。
むしろ、最初はかなりゆっくりで大丈夫です。

大切なのは、速さではなく、動きの流れです。


ステップ1:ゆっくりしたテンポで1打目だけを大きく叩く

まずは、ゆっくりしたテンポで1打目を大きく叩きます。

この時、肩や腕に力を入れすぎないようにしましょう。
「力で叩く」というより、腕の重みを使って自然に落とす感覚です。

1打目はDOWNです。

腕を下ろして、打面にスティックを落とします。
この1打目が、あとに続く2打目、3打目のエネルギーになります。

ただし、強く叩こうとして腕を固めてしまうと、次のリバウンドが使えなくなります。
大きな音を出しながらも、体は固めないことが大切です。


ステップ2:1打目を叩いたあと、すぐに脱力する

1打目を叩いたあとに一番大切なのが、すぐに脱力することです。

ここで力を入れっぱなしにすると、スティックの跳ね返りを自分で止めてしまいます。

ドラムの打面にスティックが当たると、自然に跳ね返ります。
この跳ね返りがリバウンドです。

モーラー奏法では、このリバウンドを邪魔しません。

1打目を叩いたら、手首や指、腕を固めずに、スティックが返ってくる力を受け止めます。

「叩いたあとに握りしめない」
「打面に押しつけない」
「跳ね返りを止めない」

この3つを意識してみてください。


ステップ3:2打目はリバウンドで小さく鳴らす

2打目はTAPです。

ここで大切なのは、2打目を自分で強く叩きにいかないことです。

1打目のあとにスティックが跳ね返ってきます。
その自然な動きの中で、2打目を小さく鳴らします。

2打目は、1打目と同じ音量にしなくて大丈夫です。
むしろ、小さく自然に鳴るくらいで十分です。

ここで無理に2打目を叩こうとすると、腕に力が入ります。
そうすると、せっかくのリバウンドが使えなくなってしまいます。

2打目は「叩く」というより、リバウンドで鳴るという感覚を大切にしましょう。


ステップ4:3打目は次の1打目の準備として鳴らす

3打目はUPです。

3打目は、ただ3つ目の音を鳴らすだけではありません。
次の1打目に向かう準備でもあります。

モーラー奏法では、音を出しながら次の動きに入っていきます。
3打目を鳴らしながら、腕は次の1打目に向かって上がっていきます。

この時、3打目を下に向かって叩き込もうとすると、次の1打目の準備が遅れます。

3打目は、アップストロークの中で自然に鳴らすイメージです。

つまり、

1打目で下ろす。
2打目でリバウンドを受ける。
3打目で次の準備をする。

この流れです。


ステップ5:DOWN・TAP・UPの流れを3連符で繰り返す

最後に、DOWN・TAP・UPの流れを3連符で繰り返します。

カウントは、

1 trip let / 2 trip let / 3 trip let / 4 trip let

のように数えると分かりやすいです。

日本語で練習する場合は、

ダウン・タップ・アップ

と声に出しながら練習しても良いです。

最初は、音量をそろえようとしすぎなくて大丈夫です。

1打目は大きく。
2打目と3打目は小さく。
そして、動きが止まらず、なめらかにつながることを意識します。

慣れてくると、音は3つ鳴っているのに、体の感覚としては1打目だけを叩いているように感じられてきます。

この感覚が出てくると、モーラー奏法の入口にかなり近づいています。


モーラー奏法でよくある失敗

モーラー奏法は、考え方としてはシンプルです。
しかし、実際に練習すると、いくつかつまずきやすいポイントがあります。

ここでは、よくある失敗と改善ポイントを整理しておきます。


2打目、3打目も自分で叩きにいってしまう

一番多い失敗は、2打目と3打目も自分で叩きにいってしまうことです。

これをしてしまうと、結局1打ずつ力で叩く形になってしまいます。
その結果、腕が疲れやすくなり、速く叩くのも難しくなります。

改善ポイントは、2打目と3打目の音量を小さくして練習することです。

最初から3つの音を同じ大きさにしようとしないでください。
1打目だけ大きく、2打目と3打目は自然に鳴るくらいで大丈夫です。


1打目のあとに脱力できない

1打目を叩いたあと、手や腕に力が残ってしまうこともよくあります。

この状態だと、スティックのリバウンドを止めてしまいます。
スティックが跳ね返らないので、2打目、3打目も力で叩くしかなくなります。

改善ポイントは、1打目を叩いた直後に「握り込まない」ことです。

打面にスティックを押しつけるのではなく、跳ね返りを受け入れるようにします。
スティックが自然に戻ってくる感覚を大切にしてください。


腕や肩に力が入りっぱなしになる

モーラー奏法は腕を使う奏法ですが、腕を固める奏法ではありません。

肩や腕に力が入りっぱなしになると、動きが重くなります。
動きが重くなると、リズムも硬くなりやすいです。

改善ポイントは、まずテンポを落とすことです。

BPM50〜60くらいで、ゆっくり動きを確認しましょう。
速く叩く前に、肩、肘、手首、指先に余計な力が入っていないか確認します。


速く叩こうとして動きが硬くなる

モーラー奏法を練習すると、「速く叩けるようになりたい」と思って、すぐにテンポを上げたくなります。

しかし、最初から速く叩こうとすると、動きが硬くなりやすいです。
硬い動きのままテンポを上げると、モーラー奏法ではなく、力任せの連打になってしまいます。

改善ポイントは、速さよりも「楽に3打が出る感覚」を優先することです。

速く叩けていても、腕が疲れるならまだ無理をしています。
ゆっくりでも、楽に音が出るなら良い方向に進んでいます。


3打目で次の準備ができていない

3打目はUPです。
次の1打目に向かう準備の音です。

ところが、3打目を下に叩き込んでしまうと、次の1打目の準備が遅れます。
その結果、次の拍に入りにくくなります。

改善ポイントは、3打目を「次の1打目への準備」と考えることです。

3打目を鳴らしながら、腕は次のDOWNに向かって準備していきます。
この流れができると、3連符が止まらず、なめらかにつながりやすくなります。


モーラー奏法は高速フレーズだけでなく、音の流れを作るためにも大切

モーラー奏法というと、「速く叩くためのテクニック」というイメージがあるかもしれません。

もちろん、速いフレーズを楽に叩くためにも役立ちます。
しかし、それだけではありません。

モーラー奏法は、音の流れを作るための奏法でもあります。

ドラムは、1つ1つの音をただ並べるだけではなく、音と音のつながりが大切です。

たとえば、シャッフルでは跳ねる流れが必要です。
ゴーストノートでは、小さな音をなめらかに入れる必要があります。
フィルインでは、アクセントと細かい音を自然につなげる必要があります。

こういう時に、1打ずつ力で叩いていると、音が硬くなりやすいです。
モーラー奏法のようにリバウンドと脱力を使えると、音が流れやすくなります。

アクセント、ゴーストノート、シャッフル、16ビート、フィルインなど、さまざまな場面で応用できます。

つまり、モーラー奏法は「高速フレーズ専用の技」ではありません。

ドラムを自然に、なめらかに、楽に叩くための土台

として考えると良いです。


まずはゆっくり、楽に3打が出る感覚を身につけよう

モーラー奏法を練習する時は、まずゆっくり始めましょう。

目安は、BPM50〜60くらいです。
最初はかなり遅く感じるかもしれませんが、それで大丈夫です。

大切なのは、速さではありません。
楽に3打が出る感覚です。

練習する時は、次のポイントを確認してみてください。

  • 1打目だけアクセントを付ける
  • 2打目と3打目は小さく自然に鳴らす
  • 1打目のあとにすぐ脱力する
  • スティックのリバウンドを止めない
  • 肩や腕に力を入れない
  • 3打目で次の1打目の準備をする
  • 音量よりも動きの流れを大切にする

速く叩けることよりも、まずは「楽に鳴る」ことを優先してください。

モーラー奏法は、力を足していく練習ではなく、余計な力を抜いていく練習でもあります。

最初は難しく感じるかもしれません。
でも、ゆっくり動きを確認しながら練習していくと、少しずつリバウンドの感覚が分かってきます。


関連する練習記事

モーラー奏法は、ダブルストロークや連打の考え方とも深くつながっています。
ダブルストロークの基礎もあわせて確認したい方は、こちらの記事も参考になります。

バスドラムのダブルが安定しない方は、足の脱力やリバウンドの考え方もあわせて確認しておくと理解しやすくなります。

16ビートの中でバスドラムダブルを使う練習に進みたい方は、こちらの記事もおすすめです。


まとめ

モーラー奏法は、力任せに叩く奏法ではありません。
腕の振り、脱力、スティックのリバウンドを使って、効率よく音を出すためのドラムテクニックです。

肩から肘、手首、指先へと、エネルギーを波のように伝えていくことで、1回の腕の動きから複数の音につなげることができます。

最初に練習すべき基本は、モーラートリップレッツです。

1打目はDOWN。
腕を下ろして、大きな音を出します。

2打目はTAP。
リバウンドで小さく自然に鳴らします。

3打目はUP。
次の1打目に向かう準備をしながら鳴らします。

音は3つ鳴っていますが、感覚としては1打目だけを叩いているような状態に近くなります。

この感覚が身につくと、速いフレーズや長時間の演奏でも疲れにくくなります。
また、アクセント、ゴーストノート、シャッフル、フィルインなどの音の流れも作りやすくなります。

まずは速さを求めすぎず、BPM50〜60くらいから始めて、楽に3打が出る感覚を大切にしてみてください。


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