こんにちは、ドラム講師の川島です。
今日は、私がこれまで聴いてきたドラムの演奏の中から、特に好きなフィルインBEST3を紹介したいと思います。
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私が好きなフィルインには、ひとつの共通点があります
フィルインとは、基本のリズムパターンから別のフレーズに変化させ、曲の区切りや次の展開を演出するものです。速い連打や複雑な手順など、ドラマーのテクニックが目立ちやすい部分でもあります。
しかし、私が好きなのは、単に難しいフィルインではありません。
音楽とぴったりマッチしていて、セクションとセクションのつなぎ目が、驚くほど気持ちよくハマるフィルインです。
静かな場面から一気にサビへ向かう。バンド全体が演奏を始める。あるいは、いよいよボーカルが入ってくる。
その一瞬に、ドラムが何を伝えるのか。そこに私は大きな魅力を感じています。
今回の3つは、すべてライブ映像から選びました。
CDで聴き慣れた曲でも、ライブでは違うフィルインが登場することがあります。ぜひ、フレーズだけでなく前後の曲の流れまで含めて聴いてみてください。

フィルインの基本的な役割について知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
第3位:L’Arc-en-Ciel「ガラス玉」|sakuraの感情が爆発するスネア連打
参考映像:『heavenly ~films~』収録「ガラス玉」/注目箇所:25分49秒付近
第3位は、L’Arc-en-Cielの元ドラマー、sakuraが演奏する「ガラス玉」のフィルインです。
私が好きなのは、Cメロが終わり、最後のサビへ入る直前の場面。曲の空気が変わり、感情が一気に解き放たれるような瞬間です。
そこで登場するのが、スネアの力強い連打。
フレーズの仕組みだけを見れば、とてもシンプルです。しかし、スティックをかなり高い位置まで振り上げながら叩く姿には、言葉では表しきれない迫力があります。
単に大きな音を出している、という感じではないんです。そこまでの曲の展開や感情を全部引き受けて、次のサビに一気に送り出しているように私には聴こえます。
もし同じ連打を、何の前触れもない場所で叩いたら、ここまで強く心に残らないかもしれません。
「その場所で、その強さで叩くからこそ成立する」。
そんな説得力があります。
フィルインを考えるとき、どうしてもタムをたくさん移動したり、手数を増やしたりしたくなります。
しかし、この演奏を聴くと、スネアだけでも曲を大きく動かせるのだと改めて感じます。

▼ 動画:25分49秒付近から再生
埋め込み動画が再生できない場合は、L’Arc-en-Ciel「ガラス玉」の動画をYouTubeで見ることができます。
スティックの振り幅そのものだけでなく、「なぜこのタイミングで、このエネルギーなのか」に注目してみてください。
第2位:Dave Weckl「The Chicken」|知性を感じる2小節のフィルイン
参考映像:Dave Weckl Band「The Chicken」/注目箇所:0分26秒付近
第2位は、デイヴ・ウェックル率いるバンドの「The Chicken」です。
私が好きなのは、バンド全体が入ってくる前に演奏する2小節のフィルイン。これが本当におしゃれなんです。
聴いた印象では、冒頭に32分音符を思わせる細かな動きがあり、後半では16分音符のような流れへとつながっていきます。
その間にも、3連符や5連符を思わせる細かな音のまとまりが入り交じり、普通なら感じやすい小節の区切りを、あえて目立たせないような流れがあります。
単に速い音符を並べているのではなく、音の密度を変化させながら、ひとつの大きなフレーズとしてまとめている。そのアイデアが本当に見事です。

そして、私がこのフィルインに最も感じるのは、技巧だけでなく、知性です。
2小節の中にさまざまなリズムのニュアンスがあるのに、最後にはバンド全体が気持ちよく入ってくる。
ドラマー自身がカウントや拍の位置を正確に感じていなければ、成立させるのは難しいと思います。
さらに興味深いのは、バンドメンバーの側も、このフィルインの後に迷いなく演奏を始めることです。
こうした複雑な導入を選べるのは、メンバー全員が拍やフィールを共有し、お互いを信頼しているからではないでしょうか。
ウェックルならではの高度なテクニックが、音楽の流れの中で自然に機能している。
私はそこに、とてもクレバーなかっこよさを感じます。

16分音符や3連符の基本を知ると、この演奏の面白さも、また違った角度から楽しめます。
▼ 動画:0分26秒付近から再生
埋め込み動画が再生できない場合は、Dave Weckl Band「The Chicken」の動画をYouTubeで見ることができます。
ぜひ、2小節の途中で小節線を意識しすぎず、バンドが入ってくるところまでをひと続きで聴いてみてください。
第1位:Red Hot Chili Peppers「Give It Away」|シンプルだからこそ最高にかっこいい
参考映像:「Give It Away」Live on the Stern Show/注目箇所:0分32秒付近
そして第1位。
私が最も好きなのは、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのチャド・スミスが「Give It Away」のライブで叩くフィルインです。
注目してほしいのは、リズム演奏からボーカルが入ってくる直前のつなぎ目です。
このフィルインは、私にとって「曲にぴったりハマる」とはどういうことかを教えてくれるような演奏です。
複雑なテクニックが連続するわけではありません。むしろ、シンプルだからこそ、タイミングや勢い、音の置き方が際立ちます。
私はこのフレーズを聴くたびに、ドラマーが聴いている人に向かって「さあ、これから歌が始まるぞ!」と合図しているように感じます。
フィルインの時点でもう次の展開が楽しみになる。
そして、その期待に応えるようにボーカルが入ってくる。ここが本当に気持ちいいんです。
たった一瞬のつなぎ目で、聴き手のテンションをこれほど上げられる。
これこそ、私が思う最高のフィルインのひとつです。

▼ 動画:0分32秒付近から再生
埋め込み動画が再生できない場合は、Red Hot Chili Peppers「Give It Away」の動画をYouTubeで見ることができます。
もし可能なら、フィルインの少し前から再生してみてください。
フィルインの前、フィルインそのもの、そしてボーカルが入ってくる瞬間をセットで聴くと、魅力がより伝わると思います。
曲全体の中でドラムの役割を聴き取る練習については、こちらも参考になります。
3つに共通するのは「次の音楽を生かす」ということ
改めて並べてみると、3つのフィルインはかなり違います。
- 第3位・sakura:スネアの連打で感情を爆発させ、最後のサビへつなぐ。
- 第2位・Dave Weckl:細かな音符と巧みなリズム構成で、バンド全体の登場へつなぐ。
- 第1位・Chad Smith:シンプルなフレーズで期待感を高め、ボーカルへつなぐ。
感情的な演奏、知的な演奏、シンプルでストレートな演奏。
アプローチはそれぞれ違いますが、私が惹かれる理由は同じです。
フィルインが終わった直後の音楽が、いっそう魅力的に聴こえること。
これが大事なのだと思います。
ドラマーがどれだけ難しいことをしていても、次のセクションへ自然につながらなければ、私には少しもったいなく感じられます。

自分でフィルインを練習するときも、「何を叩くか」だけでなく、「その後のリズムへどう戻るか」まで含めて考えてほしいと思います。
ライブだからこそ、その日、その瞬間にしか生まれないものがある
今回取り上げたのは、すべてライブ映像です。
CDに収録された演奏はもちろん素晴らしいものですが、お客さんの前で演奏するときは、ドラマーの気持ちもまた違うと思います。
会場の空気、観客の反応、バンドメンバーが出す音。その日のさまざまな出来事が、ほんの一瞬の演奏に影響することがあります。
同じ曲でも、ライブの日によってフィルインが変わることがあります。
それは、失敗や気まぐれということではなく、その瞬間の音楽に対する自然な反応なのかもしれません。
だから私は、ライブ演奏のフィルインに特別な魅力を感じます。
その日、その瞬間にしか生まれなかった表現があるからです。

そして、そんな一瞬がDVDやYouTubeの映像として残り、今でも繰り返し観られることを、本当に嬉しく思います。
本来なら、その会場にいた人にしか届かなかったかもしれない演奏。
それを時間も場所も越えて味わえるのですから、素敵な世の中になったなあと感じます。
ライブを実際に体験することの価値については、別の記事でも触れています。
まとめ|良いフィルインは、曲の続きをもっと聴きたくさせる
今回は、私が大好きな3つのフィルインを紹介しました。
スネアの連打だけで感情を爆発させるsakura。
高度なリズムで2小節をひと続きの物語にしてしまうデイヴ・ウェックル。
シンプルな一瞬でボーカルへの期待感を一気に高めるチャド・スミス。
共通しているのは、どれもフィルインのためのフィルインではなく、曲の続きを生かすためのフィルインだということです。
音符の多さやテクニックの難易度も面白い要素ですが、それだけで良い演奏が決まるわけではありません。
「次に何が起こるのか」とワクワクできるか。
次のサビや歌が入った瞬間に気持ちが上がるか。
私はそんなところに、ドラムの本当のかっこよさを感じます。

皆さんも、お気に入りのフィルインを見つけたら、ぜひその前後の音楽まで一緒に聴いてみてください。
いつもの曲が、もっと面白く感じられるかもしれません。
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