こんにちは、ドラム講師の川島です。
今回は、私が実際にドラムの楽譜を書き起こすときに行っている「耳コピ」の方法について詳しく解説していきます。
ドラムを始めたばかりの方からは、
- 曲を聴いてもドラムが何を叩いているのか分からない
- ハイハットとスネアは分かるけれど、バスドラムが聞き取れない
- フィルインになると何を叩いているのか分からなくなる
- 音は聞こえているけれど、それを楽譜にできない
といった相談をいただくことがあります。
耳コピというと「耳が良い人だけができる特殊な能力」のように思われるかもしれません。
しかし私が考える耳コピで一番大切なのは、単純な聴力ではありません。
自分の頭の中に、どれだけ多くのドラムの音やリズムパターンが蓄積されているかが非常に重要になります。
実際に私が楽譜を作る場合も、曲の中から聞こえてきた音と、自分の頭の中にあるリズムやフィルインの音を照らし合わせながら譜面へ起こしていきます。
今回は、最も基本的な耳コピの方法から、Logic ProやSuperior Drummer 3、MuseScoreなどを利用した現在の譜面作成方法、そして本当に耳コピ能力を高めるための練習方法まで順番に説明していきます。
- ドラムの耳コピで最も大切なのは「頭の中にある音」
- たくさんのリズムパターンとフィルインを覚えることが耳コピにつながる
- ドラムの音を高音・中音・低音に分けて聞く
- 私が行ってきた最も基本的な耳コピ方法
- 全部聞こえないときは楽器を1つずつ分ける
- 普段から音楽の中のドラムだけを追いかける
- 耳コピ初心者は簡単な8ビートの曲から始める
- リズムパターンとフィルインの知識が増えるほど聞き取りやすくなる
- 現在はLogic Proを使ってドラムだけを聞きやすくできる
- Superior Drummer 3とMuseScoreを使った効率的な譜面作成
- 便利な技術を使っても「耳そのもの」は鍛えられない
- 初心者は1小節ずつ何度も聞き直して大丈夫
- 耳コピをすると普段のドラム演奏にも変化が出てくる
- 耳コピは一度身につけばドラマーにとって大きな財産になる
ドラムの耳コピで最も大切なのは「頭の中にある音」
まず耳コピをするうえで、とても重要な前提があります。
それは、自分自身がある程度ドラムのリズムパターンやフィルインを叩いた経験を持っていることです。
例えば、普段から基本的な8ビートを何度も練習しているとします。
何度も叩いているうちに、
「この8ビートを叩くと、こういう音になる」
という音のイメージが頭の中へ蓄積されていきます。
そして音楽を聴いているときに、自分が練習してきた8ビートと似た音が聞こえてくると、
「あ、このパターンだな」
と判断できるようになります。
すると頭の中で演奏内容をある程度想像できるため、それを楽譜へ置き換えることができます。
つまり、
叩く → 音を覚える → 曲を聴く → 頭の中の音と照らし合わせる → 楽譜にする
という流れです。

逆に、今まで一度も叩いたことのないリズムパターンやフィルインの場合はどうでしょうか。
音源から何かが聞こえてきていることは分かっても、それが頭の中のどの音とも一致しません。
比較する材料がないため、
「何か複雑なことをやっているのは分かるけれど、何を叩いているのか分からない」
という状態になりやすいわけです。
これは耳が悪いというよりも、まだ自分の中にその音のパターンが十分に蓄積されていない可能性があります。
たくさんのリズムパターンとフィルインを覚えることが耳コピにつながる
ですので、耳コピが上手くなりたいのであれば、耳コピの練習だけを行えばよいというわけではありません。
普段のドラム練習の中で、できるだけ多くのリズムパターンやフィルインを実際に叩き、その音を自分の中へ蓄積していくことが大切です。
例えば、
- 基本的な8ビート
- バスドラムの位置を変えた8ビート
- 16ビート
- 3連系のリズム
- 基本的な16分音符のフィルイン
- タムを使ったフィルイン
といったものを練習していくと、それだけ自分の中に「ドラムの音の辞書」が増えていきます。
ここで大切なのは、楽譜の形だけで覚えないことです。
「右手・左手・右足をこの順番で動かす」
という身体の形だけで覚えてしまうと、音楽を聴いたときにそのパターンと結びつかないことがあります。
この譜面を実際に叩くと、どういう音になるのか。
ここまでセットで覚えてください。
リズムを手足の形だけで覚えてしまうと音と結びつきにくくなる理由については、こちらの記事でも詳しく説明しています。
また、ドラムの上達は「頭の中に音を入れること」と「その音を身体で再現すること」の繰り返しでもあります。
音のイメージと演奏のつながりについては、こちらの記事も参考にしてみてください。
ドラムの音を高音・中音・低音に分けて聞く
次に、実際に音源からドラムを聞き取るときの考え方です。
ドラムセットには、さまざまな高さの音があります。
大まかに分けると、
- 高音域:ハイハット、クラッシュシンバル、ライドシンバルなど
- 中音域:スネアドラム、タムなど
- 低音域:フロアタム、バスドラムなど
というように分けて考えることができます。

比較的聞き取りやすいのは、ハイハットやスネアなどです。
特にハイハットは「チッチッチッ」という高い音で刻んでいることが多く、スネアも2拍目、4拍目などにはっきり鳴っていれば比較的見つけやすいと思います。
一方で、初心者の方が難しく感じやすいのがバスドラムです。
バスドラムは低音域にあり、楽曲の中ではベースなどの低音楽器と重なります。
そのため何となく音楽全体を聴いているだけでは、バスドラムがどこで鳴っているのか分からないことがあります。
こういった場合は、意識的に低音へ集中します。
音楽全体を聞くのではなく、
「今はバスドラムの音だけを探す」
という意識で聴いてみてください。
最初はなかなか分からないかもしれません。
しかし、何度も意識して聞いていると、少しずつベースとは違うバスドラム独特のアタックや低音が分かってくるようになります。
私が行ってきた最も基本的な耳コピ方法
ここからは、実際に楽譜へ起こしていく方法を説明していきます。
最も原始的で、なおかつ耳を鍛えるという意味では非常に効果がある方法です。
やり方自体はシンプルです。
- 音楽を再生する
- 1小節程度を集中して聴く
- 音楽を止める
- 聞こえた内容を楽譜に書く
- 分からなければもう一度同じ場所を聴く
- 確認できたら次の小節へ進む

基本的には、この作業をひたすら繰り返します。
最初から4小節、8小節、あるいは曲全体を覚えようとする必要はありません。
まずは1小節です。
1小節を聞いて、
「ハイハットは8分音符かな」
「スネアは2拍目と4拍目だな」
「バスドラムは1拍目と3拍目かな」
と少しずつ確認していきます。
分からなければ、何度でも戻してください。
耳コピを始めたばかりの頃は、1小節を10回、20回と聴くことも珍しくありません。
これは決して悪いことではなく、その繰り返しそのものが耳のトレーニングになります。
全部聞こえないときは楽器を1つずつ分ける
ここで初心者の方がよくやってしまうのが、ドラムセット全体を一度に聞き取ろうとすることです。
ハイハット、スネア、バスドラム、タム、シンバルが同時に鳴っているため、それを一度に全部理解しようとすると混乱してしまいます。
全部分からない場合は、楽器を分けてください。
例えば最初は、
バスドラムだけ
に集中します。
バスドラムの位置が分かったら、次にスネアだけを聞きます。
その次にハイハット。
最後にシンバルやタムを確認します。
そして、それぞれを最後に1つの譜面へ組み合わせます。

つまり、
バスドラム+スネア+ハイハット+その他
というように、パーツを少しずつ重ねていく考え方です。
一度に全部聞き取れないからといって、「自分には耳コピの才能がない」と考える必要はありません。
むしろ、楽器ごとに分けて聞くことは耳コピの基本的な方法の1つです。
普段から音楽の中のドラムだけを追いかける
耳コピの能力を高めるためには、譜面を書く時間以外の音楽の聴き方も重要です。
普段好きな音楽を聴いているときにも、少しだけドラムに意識を向けてみてください。
例えば今日は、
「この曲のハイハットだけを追いかけてみよう」
と決めます。
別の日はスネアだけを聞きます。
さらに別の日はバスドラムだけ。
そして慣れてきたらフィルインだけに注目してみます。
このように普段から楽器を分けて聴く習慣を持つと、それまで音楽全体の中へ埋もれていた音が少しずつ分離して聞こえるようになってきます。
ドラムが上達するための音楽の聴き方については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
耳コピ初心者は簡単な8ビートの曲から始める
初めて耳コピする方は、曲選びも非常に重要です。
いきなり自分の好きな曲だからといって、テンポ200近くの曲や、細かい16分音符のバスドラム、複雑なフィルインがたくさん入っている曲を選ぶと、かなり大変になります。
最初は、できるだけシンプルな曲を選んでください。
おすすめなのは、
- テンポがゆっくり
- 基本的な8ビートが中心
- バスドラムが複雑ではない
- フィルインが少ない
- ドラムの音が比較的はっきり聞こえる
といった楽曲です。

例えば基本的な8ビートであれば、
「ハイハットは8分音符」
「スネアは2拍目と4拍目」
という大きな枠組みが最初から想像できます。
そのうえでバスドラムがどこに入っているかを確認するだけでも、かなりリズムの全体像を作ることができます。
もし8ビートそのものがまだ十分に頭へ入っていない場合は、先に基本的な8ビートを練習してみてください。
さらに8ビート、16ビート、3連系など、ドラムの基本リズムをどの順番で身につければよいのか知りたい方はこちらも参考にしてみてください。
リズムパターンとフィルインの知識が増えるほど聞き取りやすくなる
耳コピを続けていると、リズムパターンの引き出しが多い人ほど判断が速いことが分かってきます。
例えば曲を聴いて、
「これは基本的な8ビートだな」
「これは16分音符のバスドラムが入っているな」
「このフィルインは16分音符を4つ並べた形に近いな」
というように、自分がすでに知っているパターンへ当てはめられるからです。
リズムパターンそのものの理解を深めたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
また、耳コピの中でもフィルインは特に難しく感じやすい部分です。
基本的なフィルインの仕組みを理解しておくだけでも、音源から聞こえたフレーズを整理しやすくなります。
現在はLogic Proを使ってドラムだけを聞きやすくできる
ここまで紹介してきた方法は、音源をそのまま聞きながらドラムを探していく、最も基本的な耳コピ方法です。
ただ、現在では技術もかなり発達しています。
私が実際に楽譜制作をするときも、必ずしも毎回すべてを昔ながらの耳コピだけで行っているわけではありません。
Logic Proなどを利用して、通常の楽曲からドラムパートを聞きやすい状態にして作業することもできます。
普通の楽曲では、
- ボーカル
- ギター
- ベース
- キーボード
- ドラム
など、さまざまな楽器が同時に鳴っています。
当然、その中からドラムだけを追いかけるよりも、ドラムパートを分けた音源を聞いたほうが内容は確認しやすくなります。

特にバスドラムはベースと重なりやすく、原曲の状態では聞き取りにくい場合があります。
ドラムを聞きやすい状態にすることで、
「ここにバスドラムが入っていたのか」
「このフィルインではタムがこう動いていたのか」
といった部分を確認しやすくなります。
これは楽譜を制作する作業時間を短縮するうえで非常に便利です。
Superior Drummer 3とMuseScoreを使った効率的な譜面作成
さらに私の場合は、Superior Drummer 3などのドラム音源やMuseScoreなどの譜面作成ソフトも利用しています。
大まかな作業の流れとしては、まずLogic Proなどを使ってドラムパートを聞き取りやすい状態にします。
そこからドラム音源をSuperior Drummer 3などで扱い、キック、スネアなどの情報をMIDIとして利用できる形にしていきます。
そのMIDIファイルをMuseScoreなどの譜面作成ソフトへ読み込むことで、ドラムパートの大まかな形を一気に譜面として確認できるようになります。

私の場合、このような方法を使うことで、楽曲によってはドラム譜の7〜8割程度まで比較的短時間で形にできることがあります。
もちろん、そのまま完全な楽譜が出来上がるわけではありません。
特にフィルインなどは、細かいニュアンスや実際にどのタムを使っているのかなどを自分の耳で確認しながら修正していきます。
ですので実際には、
- ドラムパートを聞きやすくする
- MIDIなどを利用して大まかな譜面を作る
- 元の音源と照らし合わせる
- 違っている部分を修正する
- フィルインなど細かな部分を耳で確認する
という作業になります。
最初から最後まですべて耳だけで書く場合に比べると、かなり作業時間を短縮できます。
便利な技術を使っても「耳そのもの」は鍛えられない
ただし、ここで非常に重要なことがあります。
Logic ProやSuperior Drummer 3、MIDI、MuseScoreなどを利用すると、確かに楽譜作成の作業は楽になります。
しかし、
作業が楽になることと、耳コピ能力そのものが上がることは別です。
ここは分けて考えてください。

目的が「できるだけ早く正確な譜面を作ること」であれば、便利な技術は積極的に利用してよいと思います。
私自身も、作業効率を上げる目的ではこういった方法を利用しています。
しかし、
「曲を聴いたときに自分の耳だけでドラムが分かるようになりたい」
という目的であれば、やはり自分で何度も聞き取るしかありません。
音を聴く。
何を叩いているのか考える。
楽譜へ書いてみる。
もう一度音源を聴く。
違っていたら修正する。
この繰り返しです。
非常に地道な作業ですが、この作業を繰り返すことで少しずつ耳が鍛えられます。
初心者は1小節ずつ何度も聞き直して大丈夫
初めて1曲を耳コピで仕上げようとすると、想像以上に時間がかかると思います。
特に最初は、
「1小節聞いたけれど全然分からない」
ということもあります。
その場合は何度でも戻してください。
1回聞いて分からなければ2回。
2回で分からなければ5回。
それでも分からなければ、今度はハイハットだけ聞きます。
次にスネアだけ。
最後にバスドラムだけ。
このように細かく分けていけばよいのです。
さらにテンポの速い曲の場合は、可能であればゆっくり再生して確認するのも1つの方法です。
重要なのは、最初から完璧に聞き取ろうとしないことです。
1小節ずつコツコツ進めてください。
そして1小節できたら次の1小節へ進みます。
この積み重ねで、最終的に1曲の楽譜が完成します。
耳コピをすると普段のドラム演奏にも変化が出てくる
耳コピは、単に楽譜を作るためだけの練習ではありません。
何度もドラムの音を集中して聞いていると、普段の音楽の聴こえ方そのものが少しずつ変わってきます。
以前なら何となく「ドンドン」としか聞こえなかったバスドラムが、
「1拍目と2拍目の裏に入っている」
というように細かく聞こえるようになってきます。
フィルインについても、以前なら、
「何か速いことをやっている」
としか分からなかったものが、
「スネアからタムへ16分音符で移動している」
というように、少しずつ具体的に想像できるようになります。
さらに、こうした経験は自分自身の演奏にもつながります。
曲を聴いたときに、
「自分ならこのフィルインを使えるな」
「このバスドラムのパターンは面白いな」
と感じるようになり、自分の演奏の引き出しも増えていきます。
耳コピは一度身につけばドラマーにとって大きな財産になる
耳コピは、最初のうちは本当に大変です。
1曲を仕上げるだけでもかなり時間がかかると思います。
しかし、それだけ集中して音楽を聴く経験は、普段何となく曲を聴いているだけではなかなか得ることができません。
最初は聞こえなかったバスドラムが聞こえるようになります。
次第にフィルインの動きも分かるようになります。
そして、ある程度経験を積むと曲を聴いた瞬間に、
「おそらくこういう譜面だろうな」
という予想までできるようになってきます。
これは、自分の頭の中に大量のリズムパターン、フィルイン、そして実際の音が蓄積された結果です。
ですので、耳コピができるようになりたい方は、まず簡単な曲から始めてみてください。
テンポがゆっくりで、基本的な8ビートが使われている曲がおすすめです。
1小節聞く。
止める。
書く。
分からなければ戻る。
そしてまた聞く。
この作業を何度も繰り返してください。
時間はかかりますが、その時間は決して無駄にはなりません。
一度耳が鍛えられると、その能力はドラマーとして長く使うことのできる大きな財産になります。
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