楽譜の意味は理解できている。右手、左手、右足を動かす順番も分かっている。ゆっくりしたテンポなら、何とか叩くこともできる。
それなのに、曲に合わせた途端に身体が動かなくなったり、一度間違えると、その後の演奏まで崩れてしまったりすることがあります。
音符を追うことに必死になり、好きな曲を演奏しているはずなのに、音楽そのものを感じられなくなる人も少なくありません。
これは頭で分かっていることが、まだ心や身体、肚(はら)まで届いていない状態なのかもしれません。
ドラムが上達していく過程では、楽譜や手順を理解する「頭」だけでなく、音楽を感じる「心」、失敗の可能性も含めて演奏を前へ進める「肚」の働きが必要になります。
この記事では、ドラムが上達していく具体的な過程を例にしながら、次の内容を解説します。
- 頭・心・肚には、どのような違いがあるのか
- 頭では分かるのに身体が動かない理由
- 音楽を感じながら演奏するための練習方法
- 本番でミスをしても演奏を続けるための考え方
頭・心・肚とは何か
ここでいう頭・心・肚は、医学的に人間の働きを三つの器官へ分けるという話ではありません。
人間が物事を理解し、感じ、決断し、実際に行動する過程を分かりやすく捉えるための、日本語的・東洋思想的な比喩です。
頭は、物事を理解し、分析し、順序を考える働きです。
心は、喜び、悲しみ、不安、憧れ、感動などを受け取る働きです。
肚は、頭で考え、心で感じたことを、自分の行動として引き受ける働きです。
ドラム演奏に置き換えると、次のように考えられます。
| 働き | 主な役割 | ドラムでの具体例 | 偏りすぎた場合 |
|---|---|---|---|
| 頭 | 理解・分析・計画 | 楽譜、音符、手順、テンポを理解する | 考えすぎて身体が動かなくなる |
| 心 | 感情・感動・好み | 曲を聴いて感動し、この曲を叩きたいと思う | 気分によって練習が不安定になる |
| 肚 | 決断・覚悟・全体を引き受ける | ミスしても止まらず、曲を最後まで演奏する | 根拠なく押し通すと頑固になる |
簡潔にまとめると、次のようになります。
- 頭は「分かる」
- 心は「感じる」
- 肚は「引き受けて進む」
頭と心は比較的イメージしやすいと思いますが、肚は少し分かりにくいかもしれません。
日本語には「腹を決める」「腹をくくる」「腹が据わる」「腹に落ちる」という表現があります。
いずれも、単に情報を知っているだけではなく、自分の経験や行動として受け入れることを表しています。

ドラム上達の第一段階|頭で仕組みを理解する
ドラム初心者が最初に使うのは、主に頭の働きです。
たとえば、基本的な8ビートを練習するときには、次のような内容を理解する必要があります。
- 右手でハイハットを8分音符で刻む
- 2拍目と4拍目にスネアを入れる
- 1拍目や3拍目などにバスドラムを入れる
- 楽譜の横方向は時間の流れを表す
- 楽譜の縦方向は、叩く楽器の違いを表す
- 右手、左手、右足の役割を分けて考える
- 最初はBPM40〜60程度で確認する
この段階では、頭を使うことがとても大切です。
楽譜の意味も分からないまま、見よう見まねで身体だけを動かしても、間違ったリズムや手順が定着してしまう可能性があります。
頭で理解することは、演奏の設計図を作る作業です。
家を建てるときに設計図が必要なのと同じように、ドラム演奏にも「いつ、どこを、どのように叩くか」という設計図が必要です。
しかし、演奏中にすべてを言葉で考え続けることはできません。
「最初は右手と右足、次は右手だけ、その次は右手と左手……」
このように一打ずつ言葉で確認している状態では、まだ音楽を演奏しているというより、動作の順番を確認している段階です。
これは悪いことではありません。誰でも最初は、この段階を通ります。
ただし、頭で理解しただけでは、まだ自由に演奏できる状態にはなっていないということを知っておく必要があります。
ドラム初心者が最初に練習する内容については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
練習する順番を整理したい方は、こちらも参考にしてください。
ドラム上達の第二段階|心で音を感じ、演奏したいと思う
頭でリズムの仕組みを理解したら、次に必要になるのが、音楽を心で感じることです。
そもそも、多くの人がドラムを始めるきっかけは、音符を正確に並べたいからではありません。
好きな曲を聴いて感動したり、ライブでドラマーの演奏を見て格好よいと感じたりして、「自分も叩いてみたい」と思ったことが始まりではないでしょうか。
- 好きな曲を聴く
- ドラムのリズムや音色へ耳を向ける
- フィルインに格好よさを感じる
- 自分も同じように叩きたいと思う
- 曲の明るさ、悲しさ、勢い、静けさを感じる
- 音符だけでなく、音楽全体の流れを覚える
このような心の動きは、ドラムを続ける大きなエネルギーになります。
頭が「どのように叩くか」を教えてくれるのに対して、心は「なぜ叩きたいのか」を教えてくれます。
どれほど効率的な練習方法を知っていても、演奏したい曲や出したい音がなければ、練習はただの作業になってしまいます。
一方で、気持ちだけで正確なリズムや身体操作を身につけることも難しいでしょう。
「この曲が好き」「とにかく格好よく叩きたい」という心の動きは大切ですが、テンポ、手順、音符の長さなどは、頭を使って整理する必要があります。
つまり、頭と心は対立するものではありません。
頭が演奏の道筋を作り、心がその道を進む理由を与えてくれます。
音源を流すだけではなく、積極的に聴く
音楽を感じるというと、感覚的で曖昧な話に聞こえるかもしれません。
しかし、心で音楽を感じるためにも、具体的な聴き方があります。
- 曲の中で4分音符の脈を感じる
- ドラムの音を「ドン、タン、チッ」などと口で歌う
- Aメロ、Bメロ、サビなどの展開を覚える
- リズムがどこで変化するか確認する
- ベース、ギター、歌とドラムの関係を聴く
- 自分が好きだと感じる音や場面を探す
たとえば、フィルインだけを抜き出して覚えるのではなく、「なぜこの場所にフィルインが入っているのか」を聴いてみます。
サビへ入る直前なのか、歌が一区切りする場所なのか、曲の空気が変わる瞬間なのか。
音楽の流れと結びつけて覚えることで、フィルインは単なる手順ではなく、曲を次の場面へ運ぶ音になります。

ドラムが上達する音楽の聴き方については、こちらの記事で具体的に解説しています。
リズムを口で歌う重要性については、こちらの記事も参考になります。
ドラム上達の第三段階|頭の理解を身体の動きへ変える
頭で理解し、心で音楽を感じても、それだけですぐにドラムが叩けるわけではありません。
理解した内容を、実際の身体の動きへ変換する必要があります。
この過程で重要になるのが、段階的な反復練習です。
たとえば、新しいリズムやフィルインを覚える場合は、次のように進めます。
- 楽譜を見て音符を理解する
- リズムを口で歌う
- 片手だけで叩く
- 両手で叩く
- 足を加える
- 両手両足を組み合わせる
- 楽譜を見なくても再現する
- 曲の中で使う
初心者がつまずきやすいのは、1番からいきなり8番へ進もうとするときです。
楽譜を見て一度理解しただけで、原曲のテンポに合わせようとすると、頭から身体へ情報を移す時間が足りません。
その結果、右手を意識すると右足が止まり、バスドラムを意識するとスネアが遅れる、といった状態になります。
これは身体能力の不足ではありません。
複数の動きを一度に処理できるところまで、動作が整理されていないだけです。
テンポは5ずつ上げる
新しいリズムを練習するときは、BPM40〜60程度から始めます。
たとえば、BPM50で安定して叩けたら、次のように進めます。
BPM50
↓
BPM55
↓
BPM60
↓
BPM65
↓
BPM70
BPM60では叩けたのに、BPM65で崩れた場合は、無理に65へしがみつく必要はありません。
一度BPM60へ戻り、身体が自然に動く状態を確認してから、もう一度65へ挑戦します。
速いテンポを経験することも大切ですが、崩れた動きを繰り返すと、その崩れ方まで身体が覚えてしまいます。
速く叩くためには、まず遅いテンポで正しい流れを作ることが大切です。
身体で覚えるとは、無意識に動くことではない
「身体で覚える」という言葉は、何も考えず、機械的に叩くことだと誤解されることがあります。
しかし、本来はそうではありません。
身体で覚えるとは、音の流れと身体の動きが結びつき、一打ずつ細かな命令を出さなくても再現できる状態です。
車の運転に慣れると、アクセル、ブレーキ、ハンドルを一つずつ言葉で考えなくなるのと似ています。
ただし、何も感じていないわけではありません。
周囲を見ながら、必要な情報を受け取り、状況に応じて身体が動いています。
ドラムも同じです。
動作が身体へ定着すると、頭は右手や左足への細かな指示から解放され、曲全体、共演者、音量、表現へ意識を向けられるようになります。

頭では理解できているのに身体が動かない原因は、こちらの記事でも解説しています。
速く叩く前に、遅いテンポで練習する意味についてはこちらをご覧ください。
ドラム上達の第四段階|肚で演奏全体を引き受ける
肚の働きは、楽譜を読んだり、手足を動かしたりする個別の技術とは少し異なります。
肚で演奏するとは、気合いや根性だけで叩くことではありません。
また、不安が完全になくなり、自信に満ちた状態になることでもありません。
肚とは、次のような働きです。
- 完璧にできるまで動かないことではない
- 不安が消えることではない
- 何も考えず勢いだけで叩くことではない
- 失敗の可能性を含めて、その場の演奏を引き受ける
- 一音間違えても、拍と音楽の流れを前へ進める
- 自分の手足だけでなく、曲や共演者へ意識を広げる
本番での頭・心・肚
たとえば、発表会やライブで演奏するとします。
頭では、曲の構成を理解しています。
「次はフィルイン。その後にサビへ戻る」
このように、次に起こることを予測しています。
心では、さまざまな感情が動いています。
「間違えたくない」
「緊張している」
「練習してきたことを出したい」
「この曲を聴いている人へ届けたい」
そして肚では、緊張した自分のまま演奏を始めます。
緊張を完全に消してから演奏しようとするのではありません。
手が少し震えていても、カウントを出します。途中で一音間違えても、その場で止まらず、次の拍へ戻ります。
肚が据わっている人とは、絶対に失敗しない人ではありません。
失敗しても、その後の音楽を引き受けられる人です。
演奏中にスネアを一発外してしまっても、曲全体から見れば一瞬です。
しかし、「間違えた」と頭の中で何度も振り返ると、その一瞬のミスが次の小節、次のフィルイン、次のサビまで影響します。
肚で演奏するとは、過去の一打ではなく、今鳴らす一打へ戻ることでもあります。
なぜ「腹を決める」というのか
日本語には、重要な決断をするときに「頭を決める」とは言わず、「腹を決める」と表現する習慣があります。
これは、理屈として答えを出すだけでなく、その結果まで自分で引き受けるという意味を含んでいます。
ドラムの本番でも同じです。
どれほど練習しても、絶対に間違えない保証はありません。
機材の状態が違ったり、会場の音が聞こえにくかったり、普段より緊張したりすることがあります。
それでも、演奏する時間になれば始めなければなりません。
「失敗しないと確信できたら演奏する」のではなく、「失敗する可能性があっても演奏する」と決める。
これが、ドラム演奏における肚の働きです。

一度のミスから演奏全体が崩れてしまう方は、こちらの記事も参考にしてください。
ライブでの緊張に備える練習方法については、こちらで解説しています。
「腹に落ちる」とは、理解が経験へ変わること
ドラムのレッスンでは、先生から説明を聞いたときには理解できたのに、実際に叩くとできないことがよくあります。
たとえば、「速く叩くためには、力を抜くことが大切です」と説明されたとします。
言葉の意味は簡単です。
強く握りすぎず、腕や手首を必要以上に固めなければよい、と頭では理解できます。
しかし、実際に速いフレーズを叩こうとすると、無意識にスティックを強く握ってしまいます。
本人は力を抜いているつもりでも、肩が上がり、腕が固まり、二打目以降の動きが遅くなります。
そこで、テンポを落とし、スティックが自然に跳ね返る感覚を確認します。
何度も失敗しながら練習していると、ある瞬間、それまでよりも軽い力で速く叩けることがあります。
そのとき初めて、
「先生が言っていた、力を抜くとはこのことだったのか」
と実感できます。
これが「腹に落ちる」という状態です。
頭で言葉を理解しただけではなく、自分の身体と経験を通して、言葉の意味に納得しています。
しかし、この状態になる前に練習をやめてしまったり、YouTubeなどの動画を見たりして、違う練習方法に変えてしまう場合も多いのが現実です。
これは練習してもすぐに結果がでないため、不安(心に戻る)になって再び、他の動画(頭に戻る)を見たりして戻ってしまった状態です。
同じ説明を何度も聞くことにも意味がある
腹に落ちるまでには、時間がかかります。
一度聞いた説明を忘れてしまったり、以前は理解できなかった言葉が、数か月後に突然分かるようになったりすることもあります。
自分の経験が増えると、同じ言葉でも受け取り方が変わるからです。
初心者の時期に聞いた「速く叩くには脱力が必要」という言葉と、何曲も演奏したあとに聞く同じ言葉では、意味の深さが異なります。
基礎練習も同じです。
最初は単なる反復に感じていた練習が、曲を演奏する経験を重ねたあとに、「このための練習だったのか」と分かることがあります。

力を抜いているつもりなのに身体が固まる方は、こちらの記事も参考になります。
頭だけ、心だけ、肚だけでは上達が偏る
頭・心・肚は、どれか一つだけが優れていればよいわけではありません。
それぞれに大切な役割がありますが、一つだけに偏ると、練習や演奏が不安定になります。
頭だけに偏った練習
頭だけに偏ると、知識を増やすことが練習の中心になります。
- 楽譜や奏法の知識を集め続ける
- 正しい手順を考えすぎる
- 一音間違えることを恐れる
- 間違えるたびに演奏を止める
- 曲を最後まで通して叩く経験が少ない
正しい知識は必要です。
しかし、正しさを確認し続けるだけでは、音楽の時間は前へ進みません。
ドラムは時間の中で演奏する楽器です。間違いを訂正することと同じくらい、止まらずに続ける練習も必要です。
心だけに偏った練習
心だけに偏ると、好き嫌いや気分が練習を左右します。
- 好きな曲だけを勢いで叩く
- その日の気分によって練習量が変わる
- 基礎練習を避ける
- テンポや手順が曖昧なまま進む
- 同じ場所で何度も崩れる
音楽を楽しむ気持ちは非常に大切です。
しかし、楽しいという感情だけでは、安定した技術は身につきません。
好きな曲をより自由に演奏するためにこそ、頭を使った整理と、身体へ定着させる練習が必要です。
肚だけを強調した練習
肚を気合いや根性と混同すると、無理な練習につながることがあります。
- 気合いで速く叩こうとする
- 痛みや強い力みを我慢する
- 理解不足を精神力で補おうとする
- 他人の助言を聞かなくなる
- 間違った動作を繰り返す
肚で引き受けることと、無理を押し通すことは違います。
身体に痛みがある場合や、動作が大きく崩れている場合は、立ち止まって原因を考える必要があります。
肚は頭や心を否定するものではありません。
頭で状況を理解し、心の不安や違和感を受け止めたうえで、次の行動を決める働きです。
理想は、頭・心・身体・肚を循環させること
ドラムが上達する理想的な流れは、次のようになります。
- 頭で仕組みを理解する
- 心で音楽を感じる
- ゆっくり身体へ定着させる
- 肚で演奏全体を引き受ける
- 演奏後に頭で振り返る
- 次の練習で再び試す
この流れは、一直線に一度だけ進むものではありません。
演奏してみて初めて分かる課題があります。
「理解したつもりだったが、拍の位置が曖昧だった」
「手順は合っていたが、曲の流れを聴けていなかった」
「練習ではできたが、ミスの後に戻る練習が不足していた」
実際に演奏した経験を頭で振り返り、再び練習へ戻ることで、理解は少しずつ深くなります。

できる形をゆっくり作る練習過程については、こちらの記事も参考になります。
音のイメージを身体で再現する過程については、こちらで詳しく解説しています。
ドラム練習で頭・心・肚を育てる具体的方法
頭・心・肚は、特別な精神修行によって身につけるものではありません。
日々のドラム練習の方法を少し変えることで、それぞれの働きを育てられます。
頭を使う練習
頭を使う練習では、曖昧なまま繰り返さず、演奏の仕組みを整理します。
- 楽譜を1拍ずつ分解する
- 右手、左手、右足、左足の手順を書き出す
- どの楽器を、いつ鳴らすのか確認する
- 難しい箇所を1小節単位に分ける
- 現在のテンポと目標テンポを記録する
- できない原因を一つずつ切り分ける
たとえば、フィルインの後に8ビートへ戻れない場合、「フィルインが叩けない」とまとめて考えないことが大切です。
フィルインの最後の音が遅れているのか、次の1拍目が分からないのか、クラッシュシンバルとバスドラムが合っていないのか。
原因を分解すると、練習すべき内容が見えてきます。
心を使う練習
心を使う練習では、正確さだけでなく、自分が何を感じているか、どのような音を出したいかに意識を向けます。
- 練習する曲を何度も聴く
- ドラムのリズムを口で歌う
- 好きな音やフレーズを探す
- 曲が持つ明るさ、重さ、悲しさ、勢いを感じる
- 自分がどのような音を出したいか想像する
- 憧れている演奏と自分の音の違いを聴く
「正しい音を出す」だけでなく、「どのような音を出したいのか」を考えると、練習の質が変わります。
同じスネアの一打でも、強く前へ押し出す音なのか、静かに曲を支える音なのかによって、必要な身体の使い方は異なります。
肚を育てる練習
肚は、実際に演奏を引き受ける経験によって育ちます。
- 途中でミスしても、曲を止めずに最後まで叩く
- 一回だけ録音するつもりで通して演奏する
- 完璧さよりも拍の流れを優先する
- ミスした場所から、次の拍へ戻る練習をする
- 家族や先生など、人に聴いてもらう
- 本番前に「緊張しても演奏する」と決める
部分練習では、間違えたら止めて修正することが大切です。
一方、通し練習では、間違えても止まらないことが大切です。
この二つを分けて練習すると、技術を修正する力と、演奏を続ける力の両方を育てられます。
30分でできる「頭・心・肚」ドラム練習メニュー
頭・心・肚をバランスよく使うために、30分の練習を次のように分けてみましょう。
| 時間 | 練習内容 | 主に使う働き |
|---|---|---|
| 5分 | 曲を聴き、リズムを口で歌う | 心 |
| 5分 | 楽譜、拍、手順を確認する | 頭 |
| 10分 | BPMを落として部分練習する | 頭+身体 |
| 5分 | 楽譜を見ずに曲へ合わせる | 心+身体 |
| 5分 | ミスしても止まらず通す | 肚 |
練習後には、短く記録を残しておくこともおすすめです。
- どこが分からなかったか
- どの音や場面で感情が動いたか
- ミスしたあと、曲へ戻れたか
- 次回は何を練習するか
記録は長い文章でなくても構いません。
「サビ前のフィルで右足が遅れた」
「BPM65までは安定した」
「ミスしたが、次の1拍目で戻れた」
この程度でも、次の練習の方向が見えやすくなります。
あなたの練習は、頭・心・肚のどこで止まっている?
現在の練習を振り返り、どの段階に課題があるか確認してみましょう。
これは能力を分類するための診断ではありません。
今の自分が、次にどのような練習を必要としているかを考えるための目安です。
頭の段階で止まっている可能性
次の項目に当てはまる場合は、理解した内容を身体へ移す練習が必要かもしれません。
- 楽譜の説明はできるが、ドラムでは再現できない
- 演奏中に右手、左手、右足と考え続けている
- 間違えるたびに最初からやり直してしまう
- 知識を増やすことが練習の中心になっている
- 原曲のテンポになると身体が止まる
この場合は、口で歌う、片手だけで叩く、テンポを落とすなど、頭と身体をつなぐ練習を増やしましょう。
心が置き去りになっている可能性
次の項目に当てはまる場合は、音楽を聴き、感じる時間が不足しているかもしれません。
- 音符を追うだけで、曲をほとんど聴いていない
- 何のためにその曲を叩くのか分からなくなっている
- 正確さだけを求め、音楽を楽しめていない
- 好きな音や理想の演奏を思い描けていない
- 練習が作業のように感じる
この場合は、いったんスティックを置き、曲を聴く時間を作ってみましょう。
好きなフィルインや音色を探したり、ドラムを口で歌ったりするだけでも、曲とのつながりを取り戻せます。
肚が育つ途中である可能性
次の項目に当てはまる場合は、演奏を最後まで引き受ける経験を増やす必要があります。
- 練習ではできるが、本番になると止まる
- ミスをすると頭が真っ白になる
- 間違いを恐れて音が小さくなる
- 最後まで演奏を続ける経験が少ない
- 完璧にできるまで、人に聴かせたくない
この場合は、いきなり大きなステージへ出る必要はありません。
録音する、家族に聴いてもらう、先生の前で一度だけ通すなど、小さな本番を作ってみましょう。
肚は、「絶対に成功できる」という自信から生まれるのではありません。
失敗しても次へ進めた経験が、少しずつ肚を育てます。
どの段階にいても、それはドラム上達の途中です。
頭、心、身体、肚の間を何度も行き来しながら、人は少しずつ自由に演奏できるようになります。

ドラムの上達とは、頭で覚えたことが心と身体を通り、肚に届くこと
ドラムの上達は、単に知識やテクニックを増やすことではありません。
頭で理解した内容が、心で感じた音楽と結びつき、練習によって身体へ入り、最後には肚で演奏全体を引き受けられるようになることです。
- 頭は、音符や手順を理解するために必要
- 心は、音楽を感じ、練習を続ける理由を与えてくれる
- 身体は、理解したことを実際の音へ変える
- 肚は、失敗の可能性も含めて演奏を引き受ける
- どれか一つだけが優れていればよいわけではない
- 頭、心、身体、肚を何度も循環させることで上達する
- 「頭では分かるのにできない」という状態も、成長過程の一部
- 正確さだけでなく、聴くこと、感じること、最後まで続けることも大切
頭で理解したことが、すぐに身体でできなくても焦る必要はありません。
何度も音を聴き、ゆっくり身体を動かし、失敗しながら演奏を続けていくうちに、知識は少しずつ身体へ入っていきます。
そして、以前は言葉でしか分からなかったことが、ある日、自分の感覚として腹に落ちる瞬間がやってきます。
川島広明ドラム教室では、楽譜や手順を説明するだけではなく、リズムを聴くこと、口で歌うこと、身体で再現すること、ミスをしても曲を最後まで演奏することを、段階的に練習していきます。
楽譜を見ながら考えすぎてしまう方や、頭では分かっているのに身体が動かない方も、現在できているところから一つずつ進めていけば大丈夫です。
ドラムの上達は、頭だけで起こるものではありません。
音楽を心で受け取り、身体で試し、最後は肚で音を鳴らす。その繰り返しが、自分自身の演奏を作っていきます。
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